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奈良県十津川村で2021年3月、国土交通省が防災目的で全国初のドローンの目視外飛行を実施した。電波が地形で遮られるので、別のドローンを上空300mの位置に飛ばして無線を中継した。目視外飛行が可能になれば、山岳地帯などでドローンの活用範囲が大幅に広がる。

 山岳地帯など人が立ち入りにくい場所の広範囲の調査にドローンは大きな威力を発揮する。だが、そこで立ちはだかるのが視界の“壁”だ。操縦者から見えない場所まで飛ばす目視外飛行は格段と審査が厳しく、許可を取るのが難しい。

 そのハードルを乗り越えて崩壊斜面の調査で目視外飛行をなし遂げたのが、国土交通省の紀伊山系砂防事務所と大規模土砂災害対策技術センターだ。両者は2021年3月23日、奈良県十津川村で実証実験を実施した。これまで民間による物流目的の目視外飛行はあるが、防災やインフラ管理のための飛行は全国初だ。

 ドローンの飛行は、場所や目視の状態などに応じてレベルが4段階に分かれる(図1)。今回の飛行は、無人地帯を目視外で自律飛行させるレベル3に当たる。

図1■ 無人地帯の目視外飛行に初挑戦
図1■ 無人地帯の目視外飛行に初挑戦
レベル3の飛行は、民間企業による配達などを目的とした試行で実施例があるが、防災やインフラ管理のための取り組みでは全国初。国土交通省大規模土砂災害対策技術センターの資料を基に日経コンストラクションが作成
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 ドローンで調査したのは、11年の台風で大規模な深層崩壊が起こり、河道閉塞が生じた栗平地区だ。継続的な監視が必要だが、対象範囲が広いため目視内だけで飛ばすドローンでは十分に調査できなかった。

 目視外飛行で問題となったのが通信環境だ。現場は険しい山岳地帯で、ドローンが離着陸する川沿いの場所は深い谷に当たる。電波が山に遮られ、直線距離で2kmほど離れた場所まで飛行するドローンに届かない。そこで撮影用とは別に中継用のドローンをもう1台用意した。

 実証実験では、中継用ドローンを離着陸地点のほぼ真上約300mの高さで空中停止。撮影用ドローンを約6kmのルートに沿って15分間自律飛行させ、斜面を自動点検した(図2、3写真1)。動画と静止画を同時に撮影できないため、同じルートを2回飛行。撮影した静止画は270枚に及ぶ(写真2)。

図2■ 約6kmのルートを15分間自律飛行
図2■ 約6kmのルートを15分間自律飛行
2021年3月23日に奈良県十津川村栗平地区で実施した調査時の飛行ルート。国土交通省大規模土砂災害対策技術センターの資料を基に日経コンストラクションが作成
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図3■ 2台のドローンで電波障害を克服
図3■ 2台のドローンで電波障害を克服
実証実験の概要。撮影用ドローンに電波が届くよう、無線の中継用ドローンを離着陸地点の上空約300mの高さに飛ばした。国土交通省大規模土砂災害対策技術センターの資料を基に日経コンストラクションが作成
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写真1■ 2021年3月23日の実証実験の様子。報道機関などに公開した(写真:国土交通省大規模土砂災害対策技術センター)
写真1■ 2021年3月23日の実証実験の様子。報道機関などに公開した(写真:国土交通省大規模土砂災害対策技術センター)
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写真2■ ドローンで撮影した崩壊斜面。撮影した270枚の写真を基に調査エリア全体のオルソ画像と3次元データを作成した(写真:国土交通省大規模土砂災害対策技術センター)
写真2■ ドローンで撮影した崩壊斜面。撮影した270枚の写真を基に調査エリア全体のオルソ画像と3次元データを作成した(写真:国土交通省大規模土砂災害対策技術センター)
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