国土交通省がインフラDXの拠点を相次いで開設し、普及に向けて攻勢をかけている。職員だけでなく民間企業や自治体にも開放し、先端技術を体験してもらう場とする。高速通信環境を整備し、無人化施工などの技術開発も進める考えだ。
国土交通省がインフラ分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の拠点を矢継ぎ早に開設している(図1)。
2021年4月13日、東京・霞が関の本省内に85インチの大型ディスプレーなどを備えた「インフラDXルーム」を設置。4月14日には、茨城県つくば市にある国土技術政策総合研究所に「建設DX実験フィールド」をオープンさせた。関東、中部、近畿、九州の4地方整備局も4月1日以降、本局や技術事務所に相次いで「DX推進センター」や「DX人材育成センター」といった名称の拠点を開いている(写真1)。
本省と国総研、4地方整備局の間には100Gbpsの高速通信環境を整備した。各拠点は職員の研修に利用する他、自治体や民間企業にもインフラDXを体験できる場として使ってもらう考えだ。AR(拡張現実)といった技術を使い、3次元モデルを実際の空間上に重ねた映像などを見られるようにする。
国総研の実験フィールドでは、高速通信規格「5G」を使った無人化施工などを実験する。4月14日の開所式ではデモンストレーションとして国交省の山田邦博技監が実験フィールド内の油圧ショベルを遠隔操作した。併せて同日、国総研と土木研究所、建築研究所との間でインフラDXに関する協力協定を締結した。
出先事務所でも独自にDXの拠点を整備する例がある。荒川調節池工事事務所は4月26日に「建設DX推進室」を開設。CIMデータを扱えるパソコンなどを備えた専用コーナーを事務所の一角に設けた(写真2)。自治体や建設会社などの担当者を招き、同事務所が事業を進めている荒川第二・三調節池のCIMモデルに触れてもらう。
調節池のCIMモデルはインターネットでダウンロードできるようにする。5月31日に地形モデルを公開。今後、地質・土質モデルや線形・土工モデル、構造物モデルなどを順次アップする予定だ。
「CIMデータを公開する狙いは、工事発注前に建設会社の人たちに活用してもらうことだ」と、同事務所の武藤健治所長は説明する。施工者が受注後にCIMデータを受け取っても、なかなか生かし切れないからだ。「CIMモデルを活用した施工計画を立てたうえで、入札に参加してもらいたい」と武藤所長は言う。