骨材とセメント、水を混ぜて、水和反応で硬化させるコンクリート。その構成材料や硬化メカニズムを変えて、新たな性能を付与する「新しいコンクリート」が続々と生まれている。自己収縮がほとんどないコンクリートや施工性に優れるスラグを用いた固化体、納豆菌の力で腐食を抑えるコンクリートなどだ。二酸化炭素の排出量削減は重要だが、未利用資源の活用や長期耐久性の確保の視点も忘れてはならない。多様な視点で環境負荷の低減を図るシン・コンクリートの動向に迫る。

シン・コンクリート
2号集中特集/後編
目次
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砂漠の砂同士を接着させてつくる セメント要らずの硬化体
低品質でほとんど使い道のない砂漠の砂を利用してコンクリートの代替材を生み出そうと、東京大学生産技術研究所が試みている。粗骨材の石や結合材となるセメントは不要だ。世界的な問題となっている「砂不足」の解決策となり得るか。
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納豆菌でコンクリートが長持ち 自己治癒に加え鉄筋腐食を抑制
劣化しても自ら治癒し、更新工事の機会を減らせるので、脱炭素の一翼を担うと期待されている自己治癒コンクリート。量産化に成功した會澤高圧コンクリートに続けと、愛媛大学などが納豆菌を使った自己治癒材の開発を進める。生物代謝を利用して鉄筋の腐食も抑える新タイプだ。
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スラグと海水の新コンクリート 練り混ぜ後2時間も流動性確保
これからのコンクリートに求められるのは、「脱炭素」だけではない。奥村組土木興業などが開発した「スラグ固化体」では、産業副産物である鉄鋼スラグを使って製造時の二酸化炭素をほぼゼロにできる点以外に、スランプロスの少なさをアピールする。その意図は?
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自己収縮と乾燥収縮がほぼなし セメントを使わない構造部材に
製造時に大量の二酸化炭素を排出するセメントを使わなくても、構造部材としての圧縮強度を確保できるコンクリートがサスティンクリートだ。単位水量を減らして特殊な骨材を使うことで、初期のひびにつながる自己収縮と乾燥収縮をほぼゼロに抑えられる。
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耐熱・耐酸に優れたジオポリマー 「ゼロセメント」の実用化進む
水和反応と異なるメカニズムで固まるジオポリマー。セメントを使わないコンクリートの代替材として、早くから二酸化炭素の排出削減効果が注目されていた。最近では大林組などが高温のスラグ置き場の擁壁に採用。通常のコンクリートよりも高い耐熱性能を持つと印象づけた。
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入札で「CO2削減」を評価する兆し 工事成績で加点する自治体も
脱炭素社会を見据え、入札段階や工事完了後に二酸化炭素(CO2)の削減を評価する制度の運用が始まりつつある。CO2を吸収するコンクリートなど新技術の台頭に伴い、発注者である国や自治体はそれらの技術をどのように評価すべきか。早急な制度設計が必要だ。
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「グリーンウオッシュ」にご用心 忘れがちな材料の持続可能性
温暖化を防ぐため、二酸化炭素の削減、吸収、利用に目が向く。しかし、カーボンニュートラルに傾注するあまり、別の環境破壊を引き起こしては本末転倒だ。次世代のコンクリートは脱炭素や低炭素だけでなく、資源の枯渇を防ぐといった持続可能性の視点が欠かせない。