低品質でほとんど使い道のない砂漠の砂を利用してコンクリートの代替材を生み出そうと、東京大学生産技術研究所が試みている。粗骨材の石や結合材となるセメントは不要だ。世界的な問題となっている「砂不足」の解決策となり得るか。
砂、砂利、セメント、水──。比較的、簡単に手に入り、安い素材だけで出来上がるコンクリートは、インフラ構造物に欠かせない材料として長く定着している。
ただし今後も永久に使い続けられる材料かというと、疑問符が付く。原料となるセメントは製造時に大量の二酸化炭素(CO2)を排出するため、脱セメントや低炭素化に向けた技術開発は進むものの道半ばだ。加えて、砂やセメント材料となる石灰石は枯渇する恐れがあり、既に問題に直面している国が存在する。
そんな中、東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授は、コンクリートに使われていない素材を使って、コンクリートに代わる硬化体を生み出そうと研究・開発を進めている(写真1)。セメントや樹脂などを用いずに、砂漠の砂同士を接着させる技術だ。砂漠の砂は粒子が細かくてほぼ均一な粒度分布なので、コンクリートの材料に適さなかった。
原料は砂の他に、アルコールと触媒だけ。これらを密閉容器に入れて加熱・冷却し、砂の化学結合を切断・再生して、硬化体をつくる。開発を本格的に始めてからまだ数カ月しかたっていないが、現時点で1mm2当たり8Nの圧縮強度を発現させることに成功した。