これからのコンクリートに求められるのは、「脱炭素」だけではない。奥村組土木興業などが開発した「スラグ固化体」では、産業副産物である鉄鋼スラグを使って製造時の二酸化炭素をほぼゼロにできる点以外に、スランプロスの少なさをアピールする。その意図は?
奥村組土木興業が重力式擁壁のコンクリートを、自社の工場内に打設した(写真1)。見た目は通常のコンクリートだが、配合した材料は特殊だ。セメントを全く使っておらず、骨材や結合材は全て産業副産物である鉄鋼スラグを使用。加えてこれらを練るのに真水ではなく、海水を使っている(図1)。
これは奥村組土木興業とスペースK(東京都世田谷区)が共同で開発した「スラグ固化体」だ。原材料の製造過程で発生する二酸化炭素(CO2)を、一般的なコンクリートと比べて、最大で99%削減できる。
水和反応を促すセメントを使わないため、強度の確保が課題だった。奥村組土木興業は当初、水酸化ナトリウムの刺激材を混ぜる必要があると考えていた。ただ実験の過程で、強度の発現に若干の遅れはあるものの、海水だけでも十分だと分かった。海水中の塩化物イオンが早強性に、硫酸イオンが強度増進に効いているとみられる。
材齢28日での圧縮強度は水微粉末比34%で、35N/mm2程度だった。単位水量が異なる場合でも、同じ強度特性を示した。
スラグ固化体は冒頭の重力式擁壁以外にも、駐車場のコンクリート舗装で実績がある(写真2)。ポリプロピレン繊維を添加して、曲げ強度4.5N/mm2を確保できた。繊維の添加率が0.4%の場合、乗用車を40台駐車後もひび割れは生じなかった。