脱炭素社会を見据え、入札段階や工事完了後に二酸化炭素(CO2)の削減を評価する制度の運用が始まりつつある。CO2を吸収するコンクリートなど新技術の台頭に伴い、発注者である国や自治体はそれらの技術をどのように評価すべきか。早急な制度設計が必要だ。
二酸化炭素(CO2)を資源として活用するカーボンリサイクル。温暖化ガス排出量の「実質ゼロ」を目指し、経済産業省が特に力を入れている分野だ。2021年度予算案では、同分野の推進に向けて438億円を計上した。
カーボンリサイクル産業の分野は「化学品」や「燃料」、コンクリートをはじめとする「鉱物」など多岐にわたる。経産省はこの中で、早期に普及を図れる製品としてコンクリートに注目する(図1)。
「闇雲に技術開発を支援しても仕方がない。まずは、製造時に水素を使わないコンクリートなどに重点を置く」。同省資源エネルギー庁カーボンリサイクル室の富永和也課長補佐は、こう話す(写真1)。水素は、製造時にCO2を大量に排出する。加えて、CO2を減らすように製造すると現時点では高いコストがかかる。

経産省が公表するカーボンリサイクルのロードマップでは、30年からの普及品の1つにCO2を吸収させるコンクリートを挙げている(図2)。
普及への壁となるのがコストだ。例えば、経産省が20年12月に公表したグリーン成長戦略に名を連ねる「CO2-SUICOM(スイコム)」の製品価格は、1kg当たり100円。既存コンクリートの3倍以上だ。
「技術開発を支援したり公共調達で販路を広げたりして、30年までに既存コンクリートと同価格にすることを目指す」。富永課長補佐は、こう意気込む。取り組みの一環として、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にCO2吸収型コンクリートを登録し、自治体への周知を図る。
経産省は、販路拡大の起爆剤として25年の大阪・関西万博に期待を寄せる。CO2吸収型のコンクリートを導入し、アピールしようと画策する。その他、入札時にCO2吸収型コンクリートの利用を求めるなど、技術の普及を後押ししていく方針だ。