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温暖化対策で工事成績に加点

 CO2排出量の削減を入札時ではなく、工事完了後に評価する取り組みも有効だ。例えば横浜市は、現場で温暖化対策を実施すれば工事の成績に反映する制度を21年1月に始めた。横浜市財政局公共施設・事業調整課の上野慶担当課長は「地球温暖化対策を実施した工事について、成績で評定する制度をまとめたのは全国でも珍しい」と話す(写真3)。

写真3■ 横浜市財政局公共施設・事業調整課の上野慶担当課長(写真:日経コンストラクション)
写真3■ 横浜市財政局公共施設・事業調整課の上野慶担当課長(写真:日経コンストラクション)

 市が想定する温暖化対策とは、工事用電源などにおける再生可能エネルギーの活用と証書によるカーボンオフセットの採用、CO2排出量の少ない燃料の使用だ(図4)。工事成績では、「創意工夫」の項目のうち「環境保全に関する工夫」で加点する。

図4■ 再生可能エネルギーなどの活用を推奨

工事成績で加点する具体的な手法

  1. 工事用電源などにおける再生可能エネルギーの活用
  2. 証書によるカーボン・オフセット
  3. 二酸化炭素排出量の少ない燃料の使用
温暖化対策を実施するには、事前に施工者と市が協議して施工計画に加える必要がある。横浜市の資料を基に日経コンストラクションが作成

 加点の対象について、現時点ではコンクリートの製造時に排出されるCO2の削減量は含まない。同市温暖化対策統括本部調整課の宮島弘樹担当課長は「脱炭素の推進に当たって、コンクリートは無視できない。今後の協議で検討するつもりだ」と話す。

ノルウェーで木造トラスを使った橋

 入札時の加点や工事成績の評価で対象とするのは、工事目的物の仕様が固まっている中で建設会社などに求めるCO2排出量削減の提案や施工上の工夫だ。そのため、削減の効果はそれほど大きくない。

 事業の上流の過程から民間の知恵を借りて設計内容に反映させれば、CO2排出量の削減幅を最大化できる。海外で実際にそんな入札が行われた。ノルウェーのミョーサ湖に架かる「ミョーサ橋」のプロジェクトだ。予定では21年末頃に建設を始める。

 4車線の高速道路の一部で長さは約1.6km。事業者のノルウェー新道路公社のNye Veierは、建設会社の技術力を設計内容に反映できるECI方式を採用した。CO2の排出量の削減可能な構造形式を、入札参加者に提案してもらった(図5)。

図5■ 木材とコンクリートで橋を設計
図5■ 木材とコンクリートで橋を設計
ノルウェーのミョーサ湖に架かる橋のイメージ。上部構造に木材を使用する(資料:Nye Veier)
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 受注に至った提案は、上部構造が木造トラスの形式だ。全てコンクリートで建設するよりもCO2の排出量を39%減らせる。入札参加者の中で、CO2排出量が最も少なかった。

 上部構造は、コンクリートのみを使う場合と比べて約17%軽い。基礎の小型化につながるため、CO2の排出量とともに建設コストも減らせる。

 ここでのポイントは、ECI方式の導入もさることながら、CO2削減を入札の評価項目の1つに組み込んだ点だ。発注者の協力なくして、事業の初期段階からCO2削減を考慮したプロジェクトの推進は難しい。