温暖化を防ぐため、二酸化炭素の削減、吸収、利用に目が向く。しかし、カーボンニュートラルに傾注するあまり、別の環境破壊を引き起こしては本末転倒だ。次世代のコンクリートは脱炭素や低炭素だけでなく、資源の枯渇を防ぐといった持続可能性の視点が欠かせない。
今や国策となった低炭素化、脱炭素化の取り組み。二酸化炭素(CO2)を資源と捉えて再利用する重要性は大きい。ただし、それを追い求めるあまり、他の側面で環境破壊を引き起こす「グリーンウオッシュ」に陥らないようにしたい。
例えば、CO2を排出しないことを売りとする電気自動車。普及すればするほど温暖化ガスを排出するガソリン車の割合が減るため、地球環境に良い。ただ製造時には別の面で地球へ及ぼす悪影響が懸念されている。バッテリーに必要な大量のレアメタルを採掘する工程で、水質汚濁や農作物汚染といった環境破壊を引き起こす恐れだ。
翻って、コンクリートはどうか。製造時にCO2を大量に排出するセメントをできるだけ使わない動きが出てきた。ただし、セメントの代わりに使う資源に枯渇の恐れがあったり、代替材を使った影響で構造物本来の耐久性が低下したりするようでは、上辺だけの環境配慮となってしまう。
国際コンクリート連合(fib)で会長を務める三井住友建設の春日昭夫副社長はこの点について、「局所的なサステナビリティーでは意味がない」と話す。
例えば、材料の製造時だけでなく、供用時も含めて時系列で評価する視点が重要だ。コンクリートの製造時にCO2の削減効果が低い材料でも、従来と比べて長持ちするのであれば更新時期が延びるため、環境負荷を減らせるかもしれない。
材料の埋蔵量についても配慮が必要だ。実はコンクリートを構成する資源は長期的な視点で見ると、決して潤沢なわけではない。例えば、細骨材。砂浜は痩せ続けており、工業的な基準を満たす砂がどこにでもあるわけではない。
インフラ構造物などの建設のために砂の利権を争う「sand war」が起こるほど、砂不足を問題視する国もある。例えば、サウジアラビアは国内での砂不足を理由に、他の湾岸諸国への建設用の砂の販売を一時的に禁止した。