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いとう・あつのぶ
いとう・あつのぶ
1959年生まれ。79年3月に大分工業高等専門学校を卒業し、同年4月に大林組に入社。国内で主にトンネル工事に携わってきた。2007年11月に東京本社土木本部戦略工務部専任役に就任。15年4月からは名古屋支店土木工事部長を務め、約40現場を統括。19年2月に松山自動車道明神山トンネル工事事務所の所長に就き、現在に至る(写真:日経コンストラクション)

 「人を上手に使う技術者」を育てる達人がいる。大林組明神山トンネル工事事務所所長を務める伊藤敦信氏だ。

 「自分で何でもやる、ではダメ。人に任せられることは人に任せ、自分にしかできないことを極めた技術者に育ってほしい」と伊藤氏は語る。

 伊藤氏が担うのは、愛媛県を走る松山自動車道で一部に付加車線を設置する工事のうち、延長約2.5kmの明神山トンネルを施工する現場だ。この現場でも人材育成の観点で現場を運営している。

 例えば、伊藤氏は現場が始まる際、発注者への報告書などの作成手間を軽減できる環境を整えた。派遣社員を2人確保し、書類作成について1カ月ほど教育。技術者が現場で指示し、作業所に戻る頃には報告書が完成している仕組みだ。

 「人に任せて、その成果を確認できる能力を身につけさせたい」と伊藤氏は言う。その結果、作業効率が上がり、技術者が研さんに使える時間も生み出せる。

 人を上手に使う能力は、伊藤氏が技術者に必要な資質の1つとして重視するものだ。この能力を身につけるには、知識を深めつつ現場経験も踏み、技術者としての判断力を養っていくことが重要だ。そこで、週に1回、若手技術者向けに土木分野の基礎知識を学ぶ勉強会を開催し、自らも解説する。

提案を積極的に受け入れる

 部下への指導では、技術者一人ひとりの意志を尊重し、自ら考え、実行させることで判断力を養わせている。「提案は絶対に否定しない」と伊藤氏は言い切る。部下からの提案はまず肯定して任せ、うまくいかなかったら解決策を一緒に考える。

 伊藤氏の部下の木野村有亮氏は「『よく考えた結果の失敗であれば大勢に影響はない、失敗を恐れず明るくやるように』と言われる。結果、うまくいって成功体験へとつながり、自信をつけることができた」と語る。