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はしだ・しんじ
はしだ・しんじ
1965年生まれ。84年3月に高岡工芸高校建築学科を卒業し,建築設計事務所を経て91年2月に塩谷建設に入社、建築部で施工管理を担当する。18年6月に取締役建築第2部長兼土木統括部長に昇任し、19年4月から建設部門長を務め、20年4月から現職。同年11月にeラーニングの学習システム「塩谷アカデミー」の校長に(写真;日経コンストラクション)

 建設業界の大半を占める中堅・中小の建設会社は人員に余裕が乏しい。教えるスキルの低い社員が若手の教育を担うケースも少なくない。

 社員180人ほどの塩谷建設(富山県高岡市)もこうした悩みを抱えていた。そこで、同社は人的リソースの不足をICT(情報通信技術)で補うことを目指し、eラーニングのシステム「塩谷アカデミー」を2020年11月、主に新入社員向けに実装した。建設の基礎知識やビジネスマナーなどを、スマートフォンなどで動画や静止画を閲覧して学べる(図1)。

図1■ 実際の現場を教材化
図1■ 実際の現場を教材化
eラーニング「塩谷アカデミー」の教材の一部を抜粋した社外向けのサンプルコースの画面。システムはユームテクノロジージャパン(東京都港区)のプラットフォームを利用した(資料:塩谷建設)
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 アカデミーの“開校”を主導し、校長に就任したのは、常務取締役建設部門長の橋田慎司氏だ。経営陣の1人としてだけでなく、個人としても自社の人材育成に以前から危機感を抱いていた。

 橋田氏自身、建築設計事務所からの転職で入社した若い頃、必ずしも十分な教育を受けられなかった苦い経験がある。施工管理を志望して工事現場に飛び込んだものの、当時の社内には若手を教育するという文化がなかった。「学びたければ自分から上司や先輩に質問するしかなかった。武骨で質問を受け付けない雰囲気を持ち、同じことを2回聞かれると怒り出す先輩もいた」(橋田氏)

 自分と同じような苦い経験を、後輩にはさせたくない──。この思いは中堅以上の立場になるとさらに強くなった。若手に対するOJTの必要性は社内に浸透していても、丁寧に教える社員とそうでない社員との差が大きく、後者の下にいる若手は離職しがちだったからだ。