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 公共工事の発注量増加に伴い、土木業界では官民とも新卒採用を増やすなどして、土木事業の「担い手確保」に励んできた。しかし、職員や社員を採用しただけでは担い手を確保したことにはならない。育成が不可欠だ。近年はその重要性が増すとともに、難しさも生じている。

 土木技術者の育成のスタートラインは、入職前に大学や高校などで土木工学を学んだか否かで変わる。土木系学科の卒業生の人数はもともと、土木技術者の需要を全て満たすほど多くはなかった。建設産業の大半を占める中小企業では、入社して初めて土木を学ぶ技術者が珍しくなく、社内教育への依存度が高い。

 建設会社の社員研修などを受託しているハタコンサルタント(名古屋市)の降籏達生社長は、中小建設会社の研修で、大学の文系を含む非土木系の学科や、普通科の高校を卒業した技術者を教育することも多い。

 そうした技術者は、土木の基礎となる「土質、構造、流体などの力学や、測量で用いる三角関数、図面から立体図を描き起こす作業を苦手にする傾向がある」と降籏氏は言う。

 入職後に力学などの補習が必要な土木技術者は増加傾向にある。文部科学省の学校基本調査によると、大学を卒業して建築・土木・測量技術者になる人のうち、専攻が工学以外だった人の割合が上昇中だ(図1)。

図1■ 大学で工学を専攻しなかった建設技術者が増加傾向
図1■ 大学で工学を専攻しなかった建設技術者が増加傾向
建設系技術者になった大学の卒業生のうち、非工学専攻の割合は3割弱に。文部科学省の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 他方、大手建設会社や高速道路会社などのように、社員を土木系学科の出身者だけでほぼ固められる組織でも社内教育は重要だ。社会から期待されるインフラの整備、保全の技術は、老朽化や自然災害の激甚化などを背景に高度化しているからだ。

オンライン研修に工夫の余地

 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も重なる。社内教育の主流だった社員が一堂に会して学ぶ集合型研修は、感染防止の観点から実施しにくくなった。

 代替となるオンライン研修は、既存のパソコンやタブレット型端末などで実施可能で、導入のハードルは比較的、低い。半面、「講師と受講者とのコミュニケーションが不十分になる」と効果を疑問視する声も多い。

 ハタコンサルタントの降籏氏は、オンライン研修ならではの工夫が必要だと指摘する。例えば、受講者にインパクトを与えられるよう講義中に手の動きを加えたり、声を聞かせやすくするため外付けのマイクを使ったりする。受講者と共有できる文書ファイルを導入すれば、集合型研修での板書よりも文字情報を受講者に伝えやすくなる。