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トンネル工事の中断が続く東京外かく環状道路(外環道)で、「費用便益比(B/C)」が1.0以下となる懸念が生じている。事業の再評価資料を読み解くと、B/Cを算出する仕組みや運用にまつわる3つの疑問が浮かび上がる。渦中の外環道を深掘りし、道路の事業評価が直面する課題を明らかにする。

 首都圏を囲む3本の環状高速道路。内側の首都高速中央環状線と外側の首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の間を走るのが、東京外かく環状道路だ。千葉県市川市と東京都練馬区の大泉ジャンクション(JCT)まで開通し、中央自動車道や東名高速道路との接続に向けて上下線計6車線での延伸が進む(写真1図1)。この事業が今、暗礁に乗り上げている。

写真1■ 外環道は東京都の世田谷区や練馬区の大深度地下にトンネルを通す。2018年8月撮影(写真:大上 祐史)
写真1■ 外環道は東京都の世田谷区や練馬区の大深度地下にトンネルを通す。2018年8月撮影(写真:大上 祐史)
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図1■ 関越自動車道と東名高速道路を6車線道路で結ぶ
図1■ 関越自動車道と東名高速道路を6車線道路で結ぶ
国土交通省の資料や取材を基に日経コンストラクションが作成
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 国土交通省関東地方整備局は2020年7月、外環道の関越自動車道から東名高速道路までの区間(以下、当該区間)について事業の再評価結果を公表。施工計画の見直しなどによる事業費の増加を明らかにした。事業がもたらす便益の総額を費用の総額で割った値である費用便益比(B/C)は、前回評価時(16年度)の1.92から1.01に低下した。

 この数字が1.0以下になれば、インフラに要するコストがそれによって得られる便益以上となるので、対象のインフラを整備する意義が問われることになる。

 さらに20年10月には、大深度地下トンネル工事に伴う地上での陥没事故が発生。トンネルを掘削するシールド機は1年近く停止しており、事業の遅れが予想されている。