床版の増し厚補強では、コンクリートの厚さを最小限に抑えるのが経済的だ。栃木県の乳ノ木橋では、縦方向と横方向の鉄筋を一体化したプレハブ鉄筋を使って、増し厚の断面を従来工法と比べて約3割薄くした。再劣化を防いで長寿命化を図るため、接着剤や補修材を組み合わせた。
橋の鉄筋コンクリート(RC)床版の経年劣化などに対して、有効な補強工法の1つが増し厚だ。特に、建設年度が古く床版厚が薄い橋では、増し厚によって劣化しにくくなり、長寿命化につながる。ただし、増し厚は死荷重の増加に直結するため、桁の補強が増える。
栃木県日光市に架かる乳ノ木橋では、日本大学の阿部忠名誉教授とJFEシビルが共同で開発したプレハブ鉄筋の「グリッドメタル」を使って増し厚の断面を薄くし、桁の補強を最小限にとどめた。床版の補強に用いたのは初だ。床版の上面と下面の増し厚の両方に適用し、2021年3月に工事を完了した(写真1)。
グリッドメタルは、鋼板を格子状の鉄筋組みのように加工して亜鉛めっきで防食したものだ(図1)。縦方向と横方向の鉄筋が一体化して同一断面にあるため、鉄筋を組み立てる場合に比べて増し厚断面を薄くできる。
例えば、D10鉄筋が2本交差すると、鉄筋だけで厚さは約20mmになる。対して同等の性能を持つグリッドメタルの厚さは6mmに収まる(図2)。増し厚断面が3割ほど薄くなり、コンクリートの使用量が減る。現場の配筋作業が不要で、施工性も向上する。