河川内の橋脚の耐震補強では、一般的に鋼矢板を使った仮締め切りや仮桟橋を構築する。そうした仮設は打ち込みなどの作業を伴うので、施工の難度が河床条件に左右される。橋脚の途中で円筒形の仮締め切り設備を固定することで、打ち込み作業を不要にし、硬質地盤に対応した。
河川内の橋脚を補修・補強する場合、鋼矢板を打ち込んだ仮締め切りや河岸からアクセスする桟橋を設けて施工するのが一般的だ。ただ、鋼矢板は橋脚周辺が硬質地盤だと打ち込みにくく、桟橋も架設する距離が長くなると工程に影響する。
秋田県能代市内に架かるJR奥羽本線・米代川橋梁では、橋脚2基の耐震補強工事に、橋脚の周囲に円筒状の仮締め切りを構築する「D-flip(ディーフリップ)工法」を採用(写真1)。鋼矢板や桟橋を設けずに、鉄筋コンクリート(RC)巻き立てによる全断面補強を実施した。発注者はJR東日本秋田支社、工期は2020年9月~21年4月だった。
同工法は、補強工事の元請けとなった第一建設工業が開発した。仮締め切り設備を橋脚の任意の高さで固定するため、河床条件に左右されない。各部材が約50kg以下と人力で搬入できる重さなので、吊り足場を使って運搬できる。施工に大型の重機も不要だ。