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厳しい制約を受ける補修・補強工事では、施工計画を組むうえで仮設や建設機械の重要性が高い。構造物の施工を確実に補助できる性能はもちろんのこと、設置や撤去の手間を減らして、工期を圧迫しないような技術開発が進む。

 補修・補強工事では、施工スペースが限られていたり工期が厳しかったりする現場が多い。そうした制約を突破するには構造体そのものに適用する技術だけでなく、施工計画をうまく組むための技術が必要だ。工事を補助する仮設の重要性は高い。

 「上下線を一体化して4車線確保」で紹介した多摩川橋の床版取り換え工事では、狭い空間に強度基準を満たす仮設防護柵を設置し、工事中の4車線確保を実現している。「鋼矢板や桟橋使わず固い地盤に対応」の米代川橋梁の橋脚耐震補強で施工計画の肝となったのは、仮締め切りを構築する「D-flip(ディーフリップ)工法」だ。

 米代川橋梁では、同工法に仮桟橋よりも工期が有利になる吊り足場として、日綜産業の「クイックデッキ」を採用したのもポイント。分割した仮締め切りの部材は人力で運べるとはいえ、最大で約50kgになる。高い強度を持つ吊り足場でなければ、資機材の運搬には耐えられなかった。

 クイックデッキは、最大積載荷重が1m2当たり350kg。資機材の運搬用足場だけでなく、仮締め切りを構築する作業足場にも使った。施工性の良さも特徴だ。基本部材が全てシステム化されており、専用工具が不要で人力で組み立てできる。

軽量版を市場に投入

 2019年度にはNETIS(新技術情報提供システム)の準推奨技術に選ばれるなど、採用実績を増やしている。新設だけでなく補修・補強工事でのニーズにも応え、日綜産業は軽量版の「クイックデッキライト」を21年から市場に本格投入した。

 クイックデッキライトは、アルミ素材の採用などで軽量化して施工性をさらに向上させた。最大積載荷重が軽くなるものの、小規模な補修工事などでも採用しやすくした。

 NETISのウェブサイトには、維持管理技術の普及を図るため、専用のページが設けられている。そこに登録された技術の中にも、仮設技術が1件含まれている。ゴシン(秋田県大仙市)が開発した仮設足場の「サークルG工法」だ(写真1)。

(写真:日本仮設)
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(写真:日本仮設)
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写真1■ ゴシンが開発した「サークルG工法」の単管フープ足場。他にH鋼アーム足場がある。日本仮設などが取り扱う

 同工法は、橋梁の地覆コンクリートや高欄を補修する際に使う。直径5cmの単管をフープ状に加工した部材を、地覆コンクリートに固定して足場を構築。部分的な補修にも対応する。部材が少ないので設置や撤去の手間が小さく、工期短縮につながるのも特徴だ。

 仮設は、最終的には撤去する設備だ。工期を圧迫しないよう、仮設自体の施工性の向上を目指す技術が多い。供用しながらの作業や工期が限られる作業が多い補修・補強工事では、導入コストが高くても最終的にはコスト面でのメリットにもつながる。