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2020年10月に発表された「2050年カーボンニュートラル宣言」。これが追い風となり、再生可能エネルギー関連施設の計画が具体化し始めている。施工者として携わるだけでなく、事業者として関与する動きも活発になってきた。

 2050年までに脱炭素社会の実現を目指す「カーボンニュートラル宣言」に、建設会社も大きな期待を寄せる。脱炭素の取り組みの1つである洋上風力発電所の新設計画が具体化し始めており、大手建設各社がその受注を狙っている。

 経済産業省と国土交通省は20年12月、「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を発表した(図1)。政府主導で市場の創出や投資促進、サプライチェーン形成、次世代技術開発などを進める。

図1■ 政府主導で洋上風力発電を急拡大
図1■ 政府主導で洋上風力発電を急拡大
「洋上風力産業ビジョン(第1次)」の概要。経済産業省と国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 政府が主導して、40年までに洋上風力による発電量が3000万~4500万kWとなるよう案件をつくり出す。原子力発電所30~45基分に相当する規模だ。北海道や東北、九州地方を中心に案件形成が進む(図2)。

図2■ エリア別の導入目標を明確化
図2■ エリア別の導入目標を明確化
事業者の環境アセスメントや新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の報告書などを基にした洋上風力発電のエリア別導入目標。政府は1年間に100万kW程度の区域指定を10年継続し、国内外からの投資の呼び水とする考えだ(資料:経済産業省、国土交通省)
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 経産省と国交省は21年7月30日、「洋上風力発電の地域一体的開発に向けた調査研究事業」の実施場所として3海域を選定。そのうち北海道岩宇・南後志地区沖と山形県酒田市沖の2海域は着床式、岩手県洋野町沖では浮体式で、今後、基本設計に必要な調査が始まる。

 洋上風力発電施設の“パイオニア”といえば、国内で初めて施工を手掛けた鹿島だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京電力の共同事業で、千葉県銚子市の沖合約3kmの海域に着床式の風車を建設する工事を担当。12年に完成し、13年3月から実証運転を開始した。

 官民連携での洋上風力発電の実証実験が進むなか、商業ベースの洋上風力発電を事業化する動きもある。鹿島は現在、秋田県の秋田港と能代港で、商業ベースとなる洋上風力発電所の建設を進めている(図3)。

図3■ 日本各地の海に風車が並び始める
図3■ 日本各地の海に風車が並び始める
秋田港で建設が進む洋上風力発電所の完成イメージ(資料:秋田洋上風力発電)
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 同社はこれまで洋上風力発電への参入を考える事業者から、事業計画を立てる際に施工費や維持管理費などの検討で支援を求められることが多かった。同社土木管理本部土木企画部長の太鼓地敏夫執行役員は「ようやく案件が具体化してきた」とさらなる受注へ期待を寄せる。

 洋上風力には陸上風力と比べて土地や道路の制約がなく、景観、騒音の影響が小さいことなどから風車を大型化しやすく、発電効率を上げられるといったメリットがある。

 清水建設が約500億円を投じ、超大型洋上風車の建設に対応できる世界最大級の自航式SEP船(自己昇降式作業船)を建造するなど、大手建設各社は受注に向けて準備を着々と進めている。

再エネ事業への参画も

 カーボンニュートラル宣言を機に再生可能エネルギー事業の活発化が期待されるなか、発電施設の建設を手掛ける施工部門とは別に、事業自体を担当する専門部署をつくる建設会社も出てきた。

 大手建設会社の中でも再生可能エネルギー事業にいち早く取り組んできたのが大林組だ。同社は、太陽光やバイオマス、陸上風力などのエネルギー供給事業を手掛けている。21年7月には地熱由来の水素の製造を開始。ニュージーランドでも水素製造供給施設の整備に取り組むなど事業参画の勢いを増している。

 大林組は、こうした事業者としての経験と、建設会社の強みである施設計画のノウハウを新ビジネスにつなげる。同社は21年4月に「グリーンエネルギー本部」を新設。今後は蓄電池や水素技術を活用した事業、地熱発電事業など新しいビジネスへの参入も進める方針だ。さらに、再生可能エネルギー事業を始めようとする企業や自治体に対する事業化支援にも取り組む。