道路トンネルの覆工コンクリートに浮きの変状が出た5つの事例を紹介する。
(1)2つのひび割れで囲まれた範囲にある浮き。覆工コンクリートのアーチの打設スパン内に生じていた。打音検査で異常を確認している(資料1)。
(2)覆工アーチ部の打音検査時に確認した浮き。打音による異常はあったもののひび割れはなく、覆工表面に変状はない(資料2)。
(3)横断目地部の周辺で確認した浮き。横断目地は一般的に3種類の目地構造(突き合わせ型、台形型、三角型)に分かれる。そのうち台形型の目地構造で、横から内部に発生していた。打音で異常があった範囲にひび割れは生じていない(資料3)。
(4)(3)と同じ位置の横断目地部の周辺で確認された浮き。こちらは三角型の目地構造で横から内部に発生した。打音で異常のあった範囲にひび割れが生じている(資料4)。
(5)矢板工法で最後に打設した区間で、覆工コンクリートの水平打ち継ぎ目に発生した浮き。様々な高さにある水平打ち継ぎ目のうち、地上から手を伸ばして、やっと検査できる高い位置にひび割れが生じていた(資料5)。
国土交通省道路局が2019年3月に発行した「道路トンネル定期点検要領」(資料6)などを参考にして、損傷の状態に適切な変状区分・判定区分を選択肢からそれぞれ1つずつ選んでほしい。

山岳トンネルの覆工コンクリートの点検では、同じ変状のように見えても診断結果が異なるケースがある。変状の種類が重複しているケースがあるためだ。様々な条件を考慮し、1つの変状に対して診断する必要がある。諸基準を読んだだけでは判定できない変状がある。維持管理に関する資料や専門技術の熟練度に加え、現場で発生している変状を理解して、基準内容をよく読まないと判定できないので気を付けよう。