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今、学生の人気を集めている分野がある。グリーンインフラだ。行政計画などにグリーンインフラの文言が盛り込まれ、関連する業務が続々と発注されるなど、仕事の面でも動きが出始めた。脱炭素に続く「自然共生社会」の実現に向けた国際的な取り決めを来年に控え、今後もますます注目を集めそうだ。

 ある大学の生物系学科の研究室選びで、1つの研究室に学生が殺到する事態が生じている。「グリーンインフラ」をテーマに扱う研究室だ。1学年のうち半数の学生が志望した。もちろん全員が入れるわけもなく、成績で「優」をたくさん取った優秀な学生からグリーンインフラの研究室へ配属された──。

 今このような「グリーンインフラをやりたい」という学生が増えている。冒頭の研究室選びだけでなく、企業や国などへのインターンや採用活動でも同様の話は尽きない。グリーンインフラやEco-DRR(生態系を活用した防災・減災)などを仕事にしたいという環境系の若手が急増しているのだ。

 グリーンインフラとは、自然環境や動植物といった生態系と、それらが人間社会に提供する様々な自然の恵み(生態系サービス)とを活用したインフラ整備や土地利用計画などを指す。あらゆる社会課題を解決し、持続可能で魅力的な国土づくりや地域づくりを進める手立てとして注目されている(下の囲み参照)。

 国内のグリーンインフラの動向を振り返ると、2015年に国土づくりの方向性を定める「国土形成計画」や社会資本整備事業を重点的に進めるための「社会資本整備重点計画」に、グリーンインフラの文言が盛り込まれた辺りから機運が高まり出した。

 あれから6年。国の動きと呼応するように、企業や自治体、業界団体、銀行などがグリーンインフラの報告書やパンフレット、事例集などを続々と公表している(写真1)。

写真1■ グリーンインフラに関連する報告書や事例集など(写真:グリーンインフラ官民連携プラットフォーム、滋賀経済同友会、総合地球環境学研究所、日本建設業連合会、日本政策投資銀行、UR都市機構)
写真1■ グリーンインフラに関連する報告書や事例集など(写真:グリーンインフラ官民連携プラットフォーム、滋賀経済同友会、総合地球環境学研究所、日本建設業連合会、日本政策投資銀行、UR都市機構)
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グリーンインフラの概念を理解する

 グリーンインフラの概念は幅広い。雨水貯留・浸透機能を持つ植生帯を設けた道路や、高潮対策のための砂丘地形の保全、多面的機能を持つ遊水地の配置、災害リスクの低い場所への居住誘導など多岐にわたる。

 グリーンインフラ官民連携プラットフォームの企画・広報部会が21年3月に発表した事例集を見れば、よりイメージが湧く。同月には、プラットフォームの技術部会がグリーンインフラに必要な要素技術集を発表した。こちらもグリーンインフラの全容を把握する上で役に立つ。

 現在、技術部会ではグリーンインフラの指標・評価手法を検討中だ。都市の浸水対策や猛暑対策、温室効果ガス削減、地域経済振興、生物多様性保全に、総合評価を合わせた指標で検討を進めている。