「ゼロカーボン」の実現に向けて動き出した日本。生物多様性に軸足を置いたグリーンインフラでは温暖化ガス対策は二の次と思われがちだが、決してそんなことはない。炭素の吸収・固定もグリーンインフラに期待できる効果だ。特に、海域の生態系が吸収・貯留する「ブルーカーボン」に注目が集まる。
2021年7月に世界自然遺産に登録された奄美大島で、グリーンインフラの新しい取り組みが展開されている。マングローブ植林を通じた、日本初の二酸化炭素(CO2)クレジットの創出だ(写真1)。
マングローブ林は水辺にすむ生物の生息地になるだけでなく、その葉や果実が生物のエネルギー源になる。波の減衰効果なども研究されており、多機能性を発揮するグリーンインフラとしての期待値は高い。
加えて、最近注目されているのが、炭素隔離効果だ。成長の過程でCO2を吸収したマングローブから枯れ落ちた枝葉が泥炭となって土壌中に蓄積。長期間にわたって分解、無機化されないため、そこでCO2を固定し続ける。このように、海中の土壌や海草・海藻など海洋生態系に取り込んだ炭素をブルーカーボンと呼ぶ。
奄美大島にある鹿児島県宇検村と伊藤忠商事は21年、マングローブの植林に合意。地元の小学生の環境学習の一環として、年間100本程度の植林を進めていく。宇検村が15年から始めていた取り組みに、伊藤忠商事が協力する(写真2)。
両者はマングローブの植林によって吸収されるCO2で、国土交通大臣の認可法人である「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)」が発行するJブルークレジットの認証を目指している。