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「ゼロカーボン」の実現に向けて動き出した日本。生物多様性に軸足を置いたグリーンインフラでは温暖化ガス対策は二の次と思われがちだが、決してそんなことはない。炭素の吸収・固定もグリーンインフラに期待できる効果だ。特に、海域の生態系が吸収・貯留する「ブルーカーボン」に注目が集まる。

 2021年7月に世界自然遺産に登録された奄美大島で、グリーンインフラの新しい取り組みが展開されている。マングローブ植林を通じた、日本初の二酸化炭素(CO2)クレジットの創出だ(写真1)。

写真1■ マングローブを植林している児童たち。2019年11月15日撮影。宇検村では干拓事業によって激減したマングローブの再生のため、15年から児童たちの環境学習の一環として、マングローブの植林を続けている(写真:宇検村)
写真1■ マングローブを植林している児童たち。2019年11月15日撮影。宇検村では干拓事業によって激減したマングローブの再生のため、15年から児童たちの環境学習の一環として、マングローブの植林を続けている(写真:宇検村)
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 マングローブ林は水辺にすむ生物の生息地になるだけでなく、その葉や果実が生物のエネルギー源になる。波の減衰効果なども研究されており、多機能性を発揮するグリーンインフラとしての期待値は高い。

 加えて、最近注目されているのが、炭素隔離効果だ。成長の過程でCO2を吸収したマングローブから枯れ落ちた枝葉が泥炭となって土壌中に蓄積。長期間にわたって分解、無機化されないため、そこでCO2を固定し続ける。このように、海中の土壌や海草・海藻など海洋生態系に取り込んだ炭素をブルーカーボンと呼ぶ。

 奄美大島にある鹿児島県宇検村と伊藤忠商事は21年、マングローブの植林に合意。地元の小学生の環境学習の一環として、年間100本程度の植林を進めていく。宇検村が15年から始めていた取り組みに、伊藤忠商事が協力する(写真2)。

写真2■ マングローブを植林した箇所の様子。琉球列島固有種であるリュウキュウアユの稚魚の隠れ家となることが期待されている。21年8月27日撮影(写真:宇検村)
写真2■ マングローブを植林した箇所の様子。琉球列島固有種であるリュウキュウアユの稚魚の隠れ家となることが期待されている。21年8月27日撮影(写真:宇検村)
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 両者はマングローブの植林によって吸収されるCO2で、国土交通大臣の認可法人である「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)」が発行するJブルークレジットの認証を目指している。