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重機に自身や周囲の状況を確認するセンサー類とハンドル操作する操舵装置とを設置しただけで、重機の自律運転が実現するわけではない。重機を制御する手立てが必要だ。重機の移動制御を中心に、その仕組みをどのように構築していったのかを解説する。

 自動化対象として鹿島が最初に選んだ振動ローラーの基本動作は、真っすぐ走ること(写真1)。複雑なのは、端部において隣のレーンに切り返す動きくらいで、作業に必要な動きは比較的単純だ。そう考えると、振動ローラーを自律運転させるためのルート設定の難度は低く、自律運転の実現も容易に思える。

写真1■ 成瀬ダムの堤体上を自律運転で動く振動ローラー。現場では自律運転による施工を繰り返している(写真:日経クロステック)
写真1■ 成瀬ダムの堤体上を自律運転で動く振動ローラー。現場では自律運転による施工を繰り返している(写真:日経クロステック)
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 しかし、自律運転の実現はそれほど簡単ではなかった。「実機に伝わる振動で操舵装置がずれてしまうなどいろいろ苦労があった」と、鹿島技術研究所の三浦悟プリンシパル・リサーチャーは振り返る。真っすぐ動かすことも、決してたやすくなかったのだ。

 重機を思いのままに動かせなければ、無駄な動きが多くなり、オペレーターを手配して作業するよりも効率や品質が落ちてしまう。そこで、開発段階では上手な運転の特徴を探るために、熟練のオペレーターと非熟練者である鹿島の社員の操縦データを集めた。両者を比べて上手な運転を数値化できれば、自律運転に必要なプログラムの作成に生かせる。

 振動ローラーの運転方法を探るうえで、長さ40mほどの直線レーンを2mずつ移動しながら4レーンを3往復する作業を実施した。複数のオペレーターの協力の下、ハンドルさばきを確認している。

 運転の巧拙は一目瞭然だった(図1)。端的な例はレーンを変える際の切り返しだ。熟練オペレーターは1回の切り返し操作で円滑に隣のレーンに移ったが、非熟練者が運転すると、何度もハンドル操作を繰り返していた。

図1■ 熟練者との差は歴然
図1■ 熟練者との差は歴然
熟練のオペレーター(左)とそうでないオペレーターによる振動ローラーの軌跡の違い。縦軸も横軸も単位はメートル。非熟練のオペレーターでは、切り返しがスムーズでなく、直線部も蛇行しがちだと分かる(資料:鹿島)
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