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鹿島が自動化の対象として最初に取り組んだ振動ローラーは、移動と作業を兼ねる。決められたルートを走らせれば、作業も管理できる。だが土砂をまき出すブルドーザーは違う。移動に加えてブレード操作が要る。複雑な運転方法を導き出した過程を追った。

 ブルドーザーには、車体全体の動きに加え、ブレード(排土板)の高さ調整といった複合的な動作が要る(写真1)。経路への追従以前に、適切な経路や動作を決めることが難しい。

写真1■ 自律運転で動くブルドーザー(写真:日経クロステック)
写真1■ 自律運転で動くブルドーザー(写真:日経クロステック)
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 そこで、数十回にわたって熟練のオペレーターの運転データを取ってみると、その方法がばらついていた。ばらつきの多い方法の中から最良の方法を導き出すのは容易ではない。作業条件や運転方法を変えていくと、その組み合わせは膨大になる。ここでシミュレーション技術を活用した。シミュレーターの開発は、芝浦工業大学の協力を得て進めた。

 シミュレーションで課題となったのは、土砂の動きをどう表現するかだ。芝浦工業大学工学部の内村裕教授はこう振り返る。「ナビエ・ストークス方程式で流体解析のように扱うとか、土粒子の挙動を細かく計算する個別要素法の使用なども考えた。だが、計算負荷が大きい。そこで、セルオートマトンを採用した」

 セルオートマトンとは、空間などを格子状のセルで表現し、セルの状態を近接するセルの状態に応じて変化させていく手法だ。ここでは、土砂の山を平面上の格子と高さで表現し、隣接するセルの高さを考慮して挙動を決めるようにした。

 具体的な動きとしては、傾斜が安息角を超えると土砂が崩れる性質を考慮。隣接するセルが示す土砂の高さを踏まえ、すべり面よりも上にある土砂が崩落するように扱った。

 こうしたルールに沿って、ダンプトラック1台が運んだ材料でマウンドを形成するモデルについて、シミュレーションを重ねた(図1)。

図1■ シミュレーターでゲームのように経路を探す
図1■ シミュレーターでゲームのように経路を探す
ブルドーザーによる土砂のまき出し経路をコンピューターシミュレーションで検討した。まき出し効率がよい方法が残るようにして経路を探していった。図は芝浦工業大学の内村裕教授が作成した動画の一部を抜粋
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 例えば、「ブルドーザーで押し土する回数は8回として、決められたマウンド空間への土砂の充填率が高くなる方法を、AI(人工知能)の1つである遺伝的アルゴリズムなどを用いて計算していった」(内村教授)。ブルドーザーが8回の押し土でマウンドを作る経路を1回計算するのに必要な時間は1秒程度で済む。

 大量の経路をAIの力を借りて計算し、最適解を探った。最適な経路では、土砂の荷下ろし位置が少しずれても、比較的高いまき出しの精度を保てることも確認した。