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異なる種類の重機を数多くの台数で連係させて自律運転を実現するシステムは、さぞ複雑で高度な技術を多用しているのではないかと思うかもしれない。しかし、実際にはシンプルな決まりを積み重ねて、工事現場の工場化を図った。

 ここでは、クワッドアクセルによる多重機の自律運転の手順を詳しく見ていく。頭脳となるのは、施工計画システムと施工管制システム、重機管理システムの3つだ(図1)。

図1■ 3つのシステムで頭脳を形成
図1■ 3つのシステムで頭脳を形成
クワッドアクセルを支えるシステムの全体像。鹿島の資料を日経クロステックが加筆修正
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 自律運転による施工を実施するために、まずは施工計画システムで当日の作業内容を固める。作業日における施工範囲をCAD上で決め、どの機械を何台配分するのかといった条件を設定する(図2)。

図2■ 条件を入力すれば工程表を作れる
図2■ 条件を入力すれば工程表を作れる
施工計画を立てる際には、作業エリアや重機台数などの条件を入力する(資料:鹿島)
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 重機の種類に応じた作業内容や重機間の作業順序は変わらない。重機ごとにあらかじめ設定された施工パターンを施工範囲に当てはめ、各重機の作業区画を配分していく。

 細分化された区画における重機の作業時間については、シミュレーションや実験などを基に把握できている。こうした情報を用いて作業の最適な組み合わせを計算していくのが、施工計画システムの役割だ。

 施工計画システムでは、生産スケジューラーを活用した。生産スケジューラーとは、工場生産を最適化するために作成されたソフトだ。鹿島に中途入社したソフト開発者が、自ら開発したソフトを改良。最適な工程を算出できるようにした。

 成瀬ダムの場合、「1時間の作業に約100個のタスクが存在する。最盛期では70時間の連続運転を予定しているので、7000タスク程度の組み合わせを考えなければならない」(鹿島技術研究所の三浦悟プリンシパル・リサーチャー)。

 そこで、重機ごとの作業を矛盾なく並べて最適な工程を見つけるために、AI(人工知能)の力を借りる。時間の隙間を少しでも減らすような計画を探り出す。こうして、効率的な工程表が得られる(図3)。

図3■ 重機の作業計画が一目瞭然
図3■ 重機の作業計画が一目瞭然
工程表のイメージ。製造業で利用されている生産スケジューラーを用いて、必要項目を入力して計算させると工程表が得られる(資料:鹿島)
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 実際の現場では、作業時間だけで最適な工程を決めるわけではない。重機の台数を減らしてコストを抑えたり、重機の移動回数を減らして安全性を高めたりする選択肢もある。

 例えば、ダンプトラック5台の場合は施工時間が8時間20分、4台だと9時間30分、6台だと7時間50分と求められたとする。時間だけを見れば、6台を選ぶべきだ。だが、コストの視点で見てみると、5台の場合が最も安いことがある。こうした際には、目的に応じた優先事項に沿って最適な方法を選んでいく。