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ダム工事と同様に反復作業が多い山岳トンネル工事でも、自動化に向けた取り組みが進んでいる。実際のトンネルを自前で掘削し、実証を本格化する。コンクリートの吹き付けやずり出しなど全工種を自動化するトンネル版クワッドアクセルの完成を目指す。

 ダム工事の自動化にめどを付けた鹿島が、次にクワッドアクセルを導入する現場として選んだのは山岳トンネルだ。削孔、装薬、ずり出し、アタリ取り、コンクリート吹き付け、ロックボルト打設──の6工種全ての自動化を目指す(図1)。

図1■ 山岳トンネルの全工種の自動化を目指す
図1■ 山岳トンネルの全工種の自動化を目指す
「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル・フォー・トンネル)」の概要。コンクリートの吹き付けやずり出しは、日本建設機械施工協会の施工技術総合研究所内に設けた実物大の模擬トンネルなどで実証実験に取り組んできた(資料:鹿島)
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 山岳トンネル工事の全自動化を実現するため、鹿島は自社で実証実験としてトンネルを掘る異例の決断を下した。その規模は長さ321.3m、断面積43.9~73.5m2。実物大のトンネルだ。岐阜県飛騨市で神岡鉱業(同市)の協力を受けて、2021年10月に着手する。自動化重機を駆使し、社員が中心となって作業を進める。

 これまで開発を進めてきたコンクリートの吹き付けやホイールローダーなどの自動化技術を導入する。加えて、模擬トンネルでは不可能だった発破の実験・検証を通じて自動削孔などの技術を高め、余掘りが生じない効率的な発破掘削の方法を探る。予定期間は2年間だ。

 山岳トンネルは、発破するたびに切り羽付近の形状や材料性状が変わる。自動化に際しては、状況に合わせた対応が必要だ。一方、切り羽付近での作業が大半なので、複数の重機を組み合わせるマネジメントの妙は少ない。一つひとつの作業の最適化が、全体の効率を高める。

 最適化した例の1つが、コンクリート吹き付けの自動化だ。切り羽付近の凹凸などを3次元で計測した結果を基に、ノズルの角度やコンクリートの吐き出し量を調整。設計厚さとの誤差を2cm以下に抑える。施工時間の短縮やコンクリートの跳ね返りの削減にも効果がある(写真1)。

写真1■ トンネルの切り羽に自動でコンクリートを吹き付ける様子(写真:日経クロステック)
写真1■ トンネルの切り羽に自動でコンクリートを吹き付ける様子(写真:日経クロステック)
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 吹き付けが必要な箇所は、壁面、鏡面、支保工の3つ。要求される仕様は箇所に応じて異なる。例えば、鏡面では肌落ちを防ぐのが目的なので、吹き付け厚さが規定値を満足すればよい。一方、壁面は吹き付け後に防水シートなどを施工するので、厚さの確保に加えて表面を平滑に仕上げる必要がある。

 そこで鹿島は、施工箇所ごとに吹き付けパターンを分けた。例えば、壁面では吹き付け範囲をタイル張りのように分割。厚さ方向も4層に分けて施工する。1層目の吹き付けを終えたら境界を少しずらして、2層目を重ねて施工する。それを繰り返してタイル間の段差をなくす。

 吹き付けパターンは、トンネル内の形状をレーザースキャナーで計測するとシステムが自動で立案する。