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ダムやトンネルよりも先に現場に導入され、長期間運用されている自動化技術がある。福島第1原子力発電所の廃炉で発生するがれきの運搬作業だ。人の立ち入りが制限される場所で、フォークリフトが狭い屋内通路を安定走行するのを支えた。

 2011年の東日本大震災から10年が経過し、廃炉作業が進む福島第1原子力発電所。現在は2号機の地下構造物の解体などを進めている(写真1)。

写真1■ 福島第1原子力発電所の2号機原子炉建屋では地下の構造物の解体などを進めており、がれきを搬出している(写真:東京電力ホールディングス)
写真1■ 福島第1原子力発電所の2号機原子炉建屋では地下の構造物の解体などを進めており、がれきを搬出している(写真:東京電力ホールディングス)
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 放射線の線量が高いがれきを入れたコンテナは、夜間に敷地内の保管施設である「固体廃棄物貯蔵庫」へ運び込む。保管施設の入り口から内部の保管場所まで運搬するのは、無人のフォークリフトだ。別の建物にいるオペレーターが運転状況を監視するなか、保管施設の内部を走行して積み下ろし作業を進める。

 コンテナの積み下ろしはオペレーターがコントローラーを使って操縦する。一方、スロープや直線通路など往復約800mの走行は、通路の分岐での転回を含めて自動化している(写真2)。オペレーターは施設内やフォークリフトに据え付けたカメラの映像を見て、作業を監視するだけだ。

写真2■ 固体廃棄物貯蔵庫内部を無人のフォークリフトが走行する(写真:東京電力ホールディングス)
写真2■ 固体廃棄物貯蔵庫内部を無人のフォークリフトが走行する(写真:東京電力ホールディングス)
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 遠隔操縦の一部をわざわざ途中で自動走行に切り替えるのは、保管施設での運搬を安全に進めるうえで極めて重要だと判断したからだ。

 システムの開発は12年に遡る。3号機原子炉建屋から表面線量率が毎時30ミリシーベルト以上の高線量がれきを搬出するに当たって、作業者の被曝を避けながらがれきを運搬する仕組みを作る必要が生じた。

 鹿島はコンテナを運ぶ車両に人を乗せない遠隔操縦を真っ先に検討した。しかし、作業全体を安定して進めるのは難しいとみた。施設内は狭い場所で通路幅が5.8m。それに対し、フォークリフトの幅は2.4m。車体側面から壁までの距離は2mもない。

 高線量のがれきには作業者が短時間しか近づけない。万一、施設内で衝突事故が起こって重機が故障すれば、修理・復旧は難しい。作業を慎重に進めるためには、カメラの映像を監視する担当者と重機を操作するオペレーターの2人がかりで臨む必要があった。

 しかも、遠隔操縦には高い集中力の維持が必要だ。スロープを下る際には、コンテナを落下させないようバックで走行する。その間、ハンドル操作は逆向きとなるので難しい。フォークリフトの往復には約45分かかる。作業ミスのリスクを小さくするためには自動化が必要だった。

 当時は振動ローラーでクワッドアクセルの自動走行技術を開発中で、屋外のクローラーダンプの自動走行には適用できていた。だが、フォークリフトにそのまま応用するわけにはいかなかった。屋内ではGNSS(衛星を用いた測位システムの総称)の信号が受信できないからだ。施設の性質上、床に車両を誘導するための信号線を埋設するといった大がかりな工事はできない。