
2012年に起こった中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故などの影響で、土木業界では既存インフラの維持管理や補修の重要性が増した。技術者はこうした業務への貢献を期待されるようになった。
吉見和氏は学生時代から、このような時代の流れに影響を受けた。就職活動では「ものづくりがしたい」といった新設への願望よりも、「今あるものを守っていく仕事の方が今後につながる」と、維持管理などへの志向をアピールした。
そうした熱意が、15年にインフラ保全センター(現・インフラ保全事業部)を設立し、既存インフラを対象とする事業への注力を掲げていたエイト日本技術開発に評価され、18年に入社した。
大学時代、主に地震動や地盤構造を学んだ吉見氏が最もやってみたかった仕事は、耐震補強の設計だ。鳥取支店インフラ保全センターで一般的な補修や点検を担当した後、現在在籍する中国支社インフラ保全部に入社2年目で異動し、その業務を担当することになった。やりたい仕事ができる好機が巡ってきた。
しかし、吉見氏は大きな壁にぶち当たることになる──。