技能者の能力評価制度に続いて必要なのが、能力レベルに応じた賃金の仕組みづくりだ。レベル別に賃金の目安を示しても、それを担保する労務費を確保しなくては実現できない。国土交通省は、標準見積書にマネジメントフィーなどを盛り込むよう改定する考えだ。
2019年4月から本格運用が始まった技能者データベース「建設キャリアアップシステム(CCUS)」。その導入目的は、単なる就業履歴の管理だけではない。半年後れで開始した技能者の能力評価制度こそ、CCUSの主要な目的といえる。
CCUSに蓄積した就業履歴や保有資格などの情報に基づいて、各技能者の能力をレベル1~4の4段階で評価する制度だ(図1)。「キャリアアップ」の名称から分かるように、技能者が経験を積み、資格を取得することで自身の評価が上がっていく。それを「レベル」として明確にし、モチベーション向上や処遇改善につなげる。
レベルの判定基準は、職種ごとに専門工事業団体が定めた(図2)。どの職種も、経験の浅い初級技能者はレベル1からスタートする。型枠技能者の場合、レベル2には3年(645日)、レベル3には7年(1505日)、レベル4には10年(2150日)の就業年数が必要だ。その他、職長としての経験年数や保有資格などの要件も定めている。
次に必要となるのが、能力レベルに応じて確実に賃金が上がる仕組みの確立だ。国土交通省は専門工事業団体に対して、レベル別の賃金目安を示すよう要請。日本型枠工事業協会や日本機械土工協会などが、各種の実態調査を基に目安の金額を設定した(図3)。
賃金目安に基づいて適切に労務費が支払われれば、技能者の賃金が上がり、労務単価が上昇。その後の発注にも、適正な労務費が盛り込まれるようになる──。国交省や建設業団体などでは、こうした好循環を見込んでいる(図4)。
とはいっても、この好循環が一筋縄で実現するわけではない。