事業破綻の危機に陥った建設キャリアアップシステム(CCUS)の料金値上げから1年が過ぎた。5年で全技能者330万人という大風呂敷から大幅に引き下げた登録目標は、今のところクリアしている。収支の面では危機を脱したものの、CCUSの普及に向けた課題は多い。
建設キャリアアップシステム(CCUS)の運営危機が表面化したのは2020年6月。登録料収入をはるかに超えるほど登録コストが肥大化し、登録数が増えれば増えるほど赤字が膨らむ構造に陥ったことが危機の原因だ。20年度末に累積赤字が100億円に上る見通しとなった。
CCUSの運営は建設業振興基金が担当し、運営方針や料金体系などは、国土交通省と建設業団体などでつくる運営協議会が決定する。建設業団体は協議会に入っているものの、危機的な運営状況については具体的に知らされていなかった。
この危機を受け、国交省が20年6月にCCUSの料金値上げ案を提示すると、建設業団体は一斉に反発。事業者登録料の値上げを当初案の5倍から2倍に引き下げたり、技能者登録に一部の入力項目を省いた「簡略型」を新設したりするなど、3度にわたって内容を変更。どうにか運営協議会総会の承認を経て、20年10月の値上げにこぎ着けた。
登録コスト増大の大きな要因となっていた電話相談窓口(コールセンター)を廃止するなど、経費を大幅に圧縮。当初は60億円を超える見込みだった20年度の支出を、33億8000万円とほぼ半分に削減した(図1)。収入も見込みより若干増えた結果、20年度の赤字は15億5000万円で済んだ。目標としている23年度までの単年度黒字も達成できそうだ。