建設キャリアアップシステムの普及に向けてインセンティブを設ける動きが活発だ。総合評価落札方式や成績評定で加点制度を導入する自治体が続出している。登録費用などの助成をはじめ、中小の建設会社が登録しやすい環境も整備されてきた。
建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及を促しているのは、国や大手建設会社だけではない。自治体の間でも、総合評価落札方式の入札や工事成績評定を利用する取り組みが広がっている(図1)。
例えば、山梨県は総合評価の項目に「技能者の登録」を追加した。2019年10月以降に公告する土木一式工事から、CCUSに登録済みの技能者を雇用する登録済み事業者に2点を加点している。
長野県は、20年4月の公告案件から、作業員名簿の作成など現場管理にCCUSの活用を誓約した事業者に0.25点を加点している。普及をさらに促すため、21年10月からは建設工事の評価対象を予定価格8000万円以上から3000万円以上に引き下げた。
CCUSの活用を工事完了後に評価する発注者もある。国土交通省は直轄工事で、事業者と技能者の登録率やカードタッチ率に応じて工事成績を加点するモデル工事を20年度から試行している。宮崎県も、国と類似したモデル工事を実施する。
宮崎県は20年8月から、国の基準に準じた「CCUS義務化モデル工事」と「CCUS活用推奨モデル工事」を実施した。21年3月までに発注した工事は、義務化が2件、活用推奨が22件でいずれの工事もまだ終わっていない。
国のモデル工事では、義務化と活用推奨ともに登録率などで最低基準を満たさなかった場合、元請けは自社のホームページなどで公表しなければならない。ただ、宮崎県はそうした規定を設けていない。
宮崎県県土整備部技術企画課の森川慎也副主幹は「モデル工事に参加するのは、CCUSの活用に積極的な会社だ。わざわざペナルティーを科す必要はない」と説明する。