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これまで幾度となく指摘されながら、なかなか改善しなかった建設業の重層下請け問題。今度こそ克服しようと、鹿島が2023年度までに原則2次までとする方針を打ち出した。それを実現するには、山ほどある「できない理由」を一つひとつ明確にして対処する必要がある。

 「製造業などもこれまで重層構造だったが、産業としての生き残りをかけて克服した」。鹿島の本多敦郎安全環境部長はこう指摘する。ところが、建設業ではたびたび重層化が問題視されながら、あまり改善が進んでいない。

 国土交通省の調査によると、建設業の下請け比率は10%程度だった1950年代から90年代までほぼ一貫して上昇(図1)。97年度には過去最高の69.1%を記録した。2010年度に54.2%まで下がったものの、その後は50%台で推移している。

図1■ 下請け比率は下げ止まり傾向
図1■ 下請け比率は下げ止まり傾向
下請け比率(下請け完成工事高÷元請け完成工事高)の推移。国土交通省の「建設工事施工統計調査」を基に日経コンストラクションが作成
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 一般的に、下請けの次数が上がると、技能者を処遇する水準は下がる。国交省の調査でも、16年7月以降に職長や班長でない技能者の賃金を引き上げた会社の割合が、2次下請けの約5割に対し、3次以下の下請けは約3割にとどまった(図2)。

図2■ 3次以下の下請けは賃金を引き上げた会社が少ない
図2■ 3次以下の下請けは賃金を引き上げた会社が少ない
直近の公共工事に従事させた技能者に対し、2016年7月以降に賃金を引き上げた会社の割合。国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 「一人前の技能者を目指す人たちは、3次の会社には入らない」と本多部長は危機感を募らせる。こうした状況のなか、鹿島は21年5月に発表した中期経営計画(2021~23)で、23年度までに下請けを原則2次までとする方針を打ち出した。

 次世代の担い手確保に向けて、鹿島が取り組む施策の一環だ。6、7年前、担い手確保の取り組みに向けて同社が協力会社に声を掛けたところ、100社弱が集まった。それらの会社と共に、対策の検討を進めてきた。

 「協力会社の代表に全国から出てきてもらい、当時の押味至一社長以下、土木・建築の部課長や私たちが同席して膝詰めで議論した。できない理由は山ほどあるが、様々な議論をしながら、原則2次までの方針を打ち出すことについて理解してもらった」(本多部長)

 21年度からの2年間は移行期間と位置付ける(図3)。原則は2次までだが、例外として3次や4次も認める。23年度からは4次を廃止し、特例として3次だけを残す計画だ。

図3■ 鹿島では2次を超える場合に支店長承諾が必要
図3■ 鹿島では2次を超える場合に支店長承諾が必要
鹿島が進めている原則2次下請け化のロードマップ。2023年4月からは例外も3次までとし、4次以上の下請けは認めない(資料:鹿島)
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 ただし、野放図に例外を認めていたら原則が骨抜きになってしまう。そこで、移行期間の2年間で、2次までに収められないケースを抽出し、変えられるかどうかを整理する。

 変えられない例の1つは、発注者がエンジニアリング会社を持っていて、その会社を1次下請けに入れざるを得ない場合だ。エンジニアリング会社から見れば2次までであっても、鹿島にとっては3次となる。

 一方、変えられそうな例が型枠の解体工事だ。解体工事会社は現在、慣習として型枠大工の下請けに入っている。その構造を変えれば次数が減る。

 一般的に、土木と比べて建築の方が下請けの階層は多くなりやすい。鹿島の場合、2次下請けまでの工事の割合が土木は86%だが、建築は66%にとどまる。