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 26人の犠牲者を出す大惨事となった静岡県熱海市の土石流(写真1)。崩落の起点となったのは民有地の盛り土だ。この盛り土では、県の定める土採取等規制条例に違反して施工していた恐れなど様々な問題が浮き彫りになり、国は全国の民有地で盛り土の一斉点検を始めた。

写真1■ 静岡県熱海市で発生した土石流の現場。写真真ん中付近に見える茶色い建物は、土石流が直撃した酒屋。SNS(交流サイト)で拡散した動画に映っており話題になった。行方不明者の捜索や応急対策工事の推進のため、現場付近は立ち入り禁止となっている。2021年8月18日撮影(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 静岡県熱海市で発生した土石流の現場。写真真ん中付近に見える茶色い建物は、土石流が直撃した酒屋。SNS(交流サイト)で拡散した動画に映っており話題になった。行方不明者の捜索や応急対策工事の推進のため、現場付近は立ち入り禁止となっている。2021年8月18日撮影(写真:日経コンストラクション)
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 行政が民有地の安全度を点検する動きとしては、2006年の宅地造成等規制法の改正を機に実施された大規模盛り土造成地の変動予測調査がある。ただし、同調査の対象は谷埋め型だと3000m2以上の面積に限られていた。一方、今回の一斉点検に面積の縛りはない。高さ5m以上の盛り土は全て抽出される。

 それ以外に自治体への無許可・無届けの盛り土なども含むため、対象は膨大な数になる。21年9月末の時点で、盛り土の総点検の予定箇所数は全国で3万~4万に上る。

 水抜きなど災害防止に必要な措置が取られているかといった視点で、点検を実施する(図1)。危険な盛り土を抽出して、土地所有者などに是正措置を求めていく方針だ。

図1■ 2021年内に盛り土の総点検
図1■ 2021年内に盛り土の総点検
盛り土の総点検の進め方(資料:内閣府の「盛土による災害の防止に関する検討会」)
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 国は年内の暫定的な取りまとめを目標に掲げるが、実作業を担う自治体は困惑気味だ。国土地理院の地形図から造った「盛り土可能性箇所データ」を基に点検対象を割り出すのだが、「アメーバのように広がる盛り土可能性箇所の整理だけでも大変」と、ある自治体の担当者は明かす。

 さらに、今後本格化する点検・評価のポイントについても、「民有地なので土地所有者の理解が得られないと近接目視が難しい」「目視では地盤内の暗きょの機能を評価できない」といった不満が続出している。

 点検を急いで問題がなかったという結論を出せば、安全宣言が一人歩きしかねない。点検の方法には慎重を期す必要があるものの、国は細かい方法について、統一の見解を出していない。