民有地の防災対策は所有者の責任で実施することは言うまでもない。ただし、斜面での工事となると膨大な費用を要するため、所有者はなかなか踏み切れない。私有財産へ行政側が資金を際限なく投入できるわけでもない。打開策はどこにあるのか。
「2021年度予算でがけ地対策や市民生活の安全対策に積極的な姿勢を示す」──。神奈川県逗子市の桐ケ谷覚市長は21年度の施政方針、予算提案でこう説明した。20年度に女子高生が犠牲になった案件を含む2件のがけ崩れで、2人の死亡者を出した同市では、民有地の防災対策を強化している。
強化策の1つが、がけ地の防災工事費助成制度の拡充だ。民有地のがけ崩れや立木の倒壊などを防ぐため、工事費などの2分の1以内を土地所有者に助成している。20年10月から、助成限度額を80万円から200万円に引き上げた。
既に助成制度を使って対策を講じた斜面も出てきた(写真1)。住民からのニーズは想定以上で、当初予算の900万円を数カ月で使い切り、新たに補正予算に組む込むほどだ。
民有地の防災対策では、急傾斜地崩壊対策工事がある。急傾斜地法に基づいて急傾斜地崩壊危険区域を指定し、都道府県が土地所有者に代わって防止工事を担える。
ただし急傾斜地の崩壊で被害が生じる恐れがある家が10軒以上密集しているなど、一定の工事実施基準を満たす必要があり、どの民有地でも使えるというわけではない。