建設DXが叫ばれるなか、ICT活用が進むのは高度な技術や技能を要する業務に限らない。報告書作成や車両運行管理、安全対策といった身近な作業を支援するツールの導入も進む。そうした「いつもの仕事」の負荷を下げることで、技術者はより高度な業務に注力できるようになる。ICTで日常業務の効率化を進める取り組みを紹介する。

いつもの仕事をICTで楽に
目次
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生コン搬入の管理ツールを独自開発
GPSを利用して生コン車の運行を管理するシステムを、通信規格の変更に併せて独自に開発。搬入、打設した生コンの総量を表示し、得られる情報を工事関係者が広く共有できるようにした。導入の鍵を握る生コン車のオペレーターの負担にも配慮する。
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除雪の担い手不足を省人化でしのぐ
豪雪地帯に立地する建設会社が、担い手不足の除雪を支援するシステムを開発した。作業日報などの作成を容易にする他、除雪機械のオペレーターをサポートする機能も持つ。社内にオペレーター経験者を擁していることが開発に役立った。
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1分足らずで作業員が「KY報告」
従来は書面で集めていた「ヒヤリハット」事例を、作業員がスマホで直接報告できるようにした。現場任せだったデータ収集をアプリで自動化し、効率的な安全対策へのさらなる活用を目指す。2段階に分けた報告方法や音声入力の採用で作業員の負担を下げる工夫も盛り込んだ。
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災害事例を原因別にグラフで表す
膨大な事故・災害事例を蓄積しても、現場の作業内容に合った事例を探すのは容易ではない。類似作業の災害事例を参照しやすくするため、AIを使って原因別に表示できるシステムを開発。厚生労働省が公開する6万4000件のデータも解析に加え、「気づき」の量を格段に増やした。
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切り羽の観察と同時に帳票完成
現場で野帳にメモした内容を事務所に戻ってから報告書に転記してまとめ上げる。残業の一因となるこうした作業を、iPadのアプリを使って現場で済ませられるようにした。帳票は作成後、オンラインストレージに保存され、発注者を含む工事関係者が共有できる。
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残業規制を見据え書類業務を効率化
時間外労働を減らす働き方改革は、あと2年あまりで建設会社の法的な責務になる。自社向けに組んだプログラムで、土木工事に付き物の書類業務の自動化を推進。自動化できない業務に割くエネルギーを確保する。
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ハンズフリーで外国人と会話
コロナ禍で一服しているが、建設業界でもグローバル化への対応が不可欠になりつつある。現場での多言語コミュニケーションを支援するため、スマホを端末に使った翻訳システムを開発。人の出入りが多い建設現場での使用を踏まえ、グループごとにQRコードで参加できるようにした。