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GPSを利用して生コン車の運行を管理するシステムを、通信規格の変更に併せて独自に開発。搬入、打設した生コンの総量を表示し、得られる情報を工事関係者が広く共有できるようにした。導入の鍵を握る生コン車のオペレーターの負担にも配慮する。

 建設工事の各工程のうち、コンクリートの現場への搬入と打設では、工場を出た生コン車がいつ現場に着くかを、できる限り正確に把握することが求められる。現場に搬入された生コンの練り混ぜ開始から打設完了までにかけられる時間は限られているからだ。

 この工程で鴻池組は、GPS(全地球測位システム)を利用した生コン車の運行管理システムを2010年から使ってきた。それまで電話連絡などで運行を把握してきたのを非効率的と判断したうえでの施策だ。

 ただ、このシステムで用いる3G(第3世代通信規格)の携帯電話が26年3月末で使えなくなる。そこで、新たに次世代の生コン車運行管理システムの開発、導入に着手した。

 現行のシステムが市販の製品を自社向けにカスタマイズしたのに対し、新システム「imanandai(イマナンダイ)」(仮称)は日本コンピュータシステム(東京都港区)に開発を委託。同社の施工管理業務支援クラウドサービス「イクト」をベースとした。

 新システムは21年12月中旬から現場への導入を始める予定だ。データを管理するクラウドサーバーの他、既存のスマートフォンやパソコンにインストールできるアプリケーションなどで構成する。

 GPS端末の役割を果たすスマホは、位置情報発信アプリをインストールしたiPhoneだ。生コン車のオペレーターに貸与して、生コン車の位置を把握する(図1)。

図1■ 生コン車へのGPSアンテナ取り付けなどは不要
図1■ 生コン車へのGPSアンテナ取り付けなどは不要
生コン車運行管理システム「imanandai」(仮称)の概要(資料:鴻池組/日本コンピュータシステム)
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 鴻池組の担当者である波多野純・ICT推進課長は、1級建築士とコンクリート診断士の資格を保有し、建築工事の現場経験が豊富だ(写真1)。現場の実情を踏まえ、通信規格の更新への対応にとどまらず、使い勝手の向上も目指した。

写真1■ 鴻池組の建設工事全般へのICT(情報通信技術)導入を推進する波多野純氏(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 鴻池組の建設工事全般へのICT(情報通信技術)導入を推進する波多野純氏(写真:日経コンストラクション)
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 市販のシステムを利用せず、自社向けのシステムを開発したのは、「コンクリートのように特に重要な資材を使いこなす技術は、なるべく独自開発で保有しておくことが建設会社としての強みになる」(波多野課長)との考えによる。将来はシステムの外販も目指す。