現場で野帳にメモした内容を事務所に戻ってから報告書に転記してまとめ上げる。残業の一因となるこうした作業を、iPadのアプリを使って現場で済ませられるようにした。帳票は作成後、オンラインストレージに保存され、発注者を含む工事関係者が共有できる。
山岳トンネルの掘削では、掘り進めながら地質や湧水の状況を評価し、その後の施工方法や支保パターンを判断する。そのため施工者は、施工日ごとに切り羽を観察して「観察記録」を作成し、発注者に提出する。
観察記録を作成するために、技術者は切り羽の様子をカメラで撮影し、野帳に記録。事務所に戻ってから写真を印刷し、野帳のスケッチやメモを転記する。現場が終わった後の作業となるので、残業時間が増える一因になっている。
この帳票作成の作業を省力化するため、五洋建設はタブレット端末のiPadを用いたアプリを開発した。アプリに発注機関が指定する観察記録の書式を用意し、従来は技術者が野帳にメモしていたスケッチや評価を、現場でiPadから直接入力できるようにした(図1)。
切り羽の写真もその場で帳票に反映できる。iPadで撮影した写真をアプリに取り込み、切り羽以外の部分を削除。ペン機能を使って亀裂や湧水の位置、文字を書き込む(図2)。
「切り羽で観察しながら帳票そのものを作成できる仕組みをつくりたかった」。五洋建設土木本部土木技術部の大森禎敏専門部長は、開発の背景をそう説明する。このアプリによって事務所で転記する作業を省略できるようになった。
切り羽の観察は若手の技術者に任せることが多いという。大森専門部長は、「地質を見る目を養うために観察の機会は無くしたくないが、現場から戻って残業で帳票をつくるのは今の時代にそぐわない」と話す。