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覆道の頂版からコンクリートが縦6m、横4mにわたって剥がれ、国道上に落ちる事故が起こった。1年前の点検で、「供用を続けるのは怖い」と専門家が感じるほど広範囲の浮きが判明していた覆道だ。道路管理者は浮いた箇所の一部をたたき落としただけで、通行規制はしていなかった。

 「これだけ広範囲に浮きが生じているのだから、既に表面のコンクリートが剥がれて内部に“遊び”ができていたはず。この状態で道路の供用を続けるのは怖い」

 コンクリート構造物の維持・補修に詳しい松村技術士事務所の松村英樹代表は、大規模な剥落事故を起こした白神覆道(北海道松前町)の直近の点検調書を見てこう驚く(写真12図1)。

写真1■ 頂版のコンクリートが剥落した白神覆道。事故発生の翌日、国土交通省が有識者と共に現場を調査した(写真:国土交通省函館開発建設部)
写真1■ 頂版のコンクリートが剥落した白神覆道。事故発生の翌日、国土交通省が有識者と共に現場を調査した(写真:国土交通省函館開発建設部)
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写真2■ 6m×4mと広範囲にわたる剥落箇所では、腐食した鉄筋が露出した。コンクリートの表面は塩害対策で被覆されている(写真:国土交通省函館開発建設部)
写真2■ 6m×4mと広範囲にわたる剥落箇所では、腐食した鉄筋が露出した。コンクリートの表面は塩害対策で被覆されている(写真:国土交通省函館開発建設部)
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図1■ 剥落範囲は事前に判明していた浮きと重なる
図1■ 剥落範囲は事前に判明していた浮きと重なる
頂版の西側ブロックの点検結果。2020年8月に実施。国土交通省函館開発建設部の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 白神覆道では2021年7月、頂版のコンクリートが縦約6m、横約4mにわたって剥離し、供用中の国道に落下した。剥落したコンクリートの厚さは6cmほどで、重さは約3tに及ぶ。幸い、被害を受けた車両はなかったが、一歩間違えば死亡事故につながる危険な状況だった。

 白神覆道は、北海道最南端の松前半島の海岸沿いを通る国道228号に設置されている。全体の延長は68mで、西側の32mは1979年、東側の36mは88年に完成した。事故があったのは西側の入り口付近だ。

 覆道を管理する国土交通省北海道開発局函館開発建設部は、2020年8月に西側区間で定期点検を実施していた。健全度は、通行止めなど緊急措置が必要なIVではなく、早期に措置が必要なIIIの判定にとどまった。そのまま供用を続けた結果、1年もたたないうちに大規模な剥落事故が起こった。

 河川に架かる橋と異なり、覆道や跨道橋では下を車が通る。構造上の問題となる劣化でなくても剥落が起これば大事故につながる恐れがある。より慎重な判断が求められるはずだ。函館開建では点検結果を受け、東側区間も含めて21年度に補修する予定だったが、間に合わなかった。