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CO2を固定するコンクリートの実装が進む

複数の技術と組み合わせてカーボンネガティブの実現を目指す

 温暖化ガスの排出ゼロに向けて、二酸化炭素(CO2)をコンクリートに吸収させる技術の開発競争が2022年も続く。コンクリートには製造時に大量のCO2を排出するセメントを使う。そこで、CO2を大幅に削減する技術が求められている。

 開発が進む技術の多くでカギとなるのは、セメントの原料である炭酸カルシウム(石灰石)だ。石灰石からCO2を熱分解して生成するセメントとは逆の作用を利用する。CO2を吸収させて生成した炭酸カルシウムを、コンクリートに固定するのだ。

 各社の技術の違いは、コンクリートを製造するどの段階でCO2を吸収させるのかという点にある(図1)。CO2を原料とした炭酸カルシウムの結晶自体を骨材として使ったり、養生中や打設中にCO2を含ませた炭酸カルシウムの粉末を導入したりするなど様々だ。

図1■ コンクリートの製造サイクルのあらゆる段階で二酸化炭素を固定
図1■ コンクリートの製造サイクルのあらゆる段階で二酸化炭素を固定
主な脱炭素コンクリートの技術。赤字は代表的な技術開発者。各者のリリースなどを基に日経コンストラクションが作成
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 新設時だけでなく既設コンクリートの修復でもCO2を固定する工法が考えられている。

 繊維資材メーカーの小泉製麻(神戸市)は、炭酸ナノバブル水の噴霧器を使う技術を開発している(写真1)。水にCO2の微細な気泡を含ませた炭酸ナノバブル水をコンクリートに散布すると、コンクリート内の水酸化カルシウムと反応して、炭酸カルシウムを形成。ひび割れなどの隙間を埋める。

写真1■ 噴霧器のイメージ。作業員が押しながら移動できる方式で開発している(写真:小泉製麻)
写真1■ 噴霧器のイメージ。作業員が押しながら移動できる方式で開発している(写真:小泉製麻)
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