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土木研究所が重機の制御回路に入力する信号ルールの共通化に向けた会議体を立ち上げ

通信やセンシングの技術発展に伴い自律施工の領域が拡大する見込み

 自動で作業する複数台の重機を遠隔地で管理する自律施工の技術開発が加速しそうだ。土木研究所は2022年度に、電子制御式の重機の制御回路に入力する信号のルールを共通化するための会議体を立ち上げる。重機の機種やメーカーに応じた開発の手間を減らし、施工技術の自動化に取り組みやすくするのが狙いだ。

 重機の自動化では、人の代わりの操作ロボットを使うケースが多かった。電子制御型の重機であれば、ロボットを使わずに電気信号で重機を操れるものの、通常、その制御回路は開示されていない。そのため、効率的な重機の自動化が難しかった。

 そこで土木研究所は重機操縦に必要な信号の共通ルールを提案。油圧ショベルの移動速度やバケットの刃先の角度といった信号や、ブームやバケットなど重機の部位ごとの動作・向きを指示する信号について、データ名称や規格の統一を検討している。

 信号の共通化と併せて、技術開発の環境を整える。22年3月までに、約2.6万m2の敷地で重機を動かせるフィールドを整え、仮想空間上で重機や土砂などを再現するシミュレーターと、アプリケーションを扱うミドルウエアとを組み合わせたプラットフォーム「OPERA」を公開する(図1)。

図1■ メーカーや研究機関の研究開発を後押しする
図1■ メーカーや研究機関の研究開発を後押しする
土木研究所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 22年度には外部との共同研究に使う形で運用を始める他、今後制御技術を競う大会を開く。研究機関や重機メーカーだけでなく、アプリベンダーやシステムインテグレーター、センサー・制御機器のメーカーなど幅広い業種の参入を呼びかけている。

 21年11月24日から26日にかけて、土木研究所は自律施工の公開デモを開催(写真1)。油圧ショベルの制御信号の原案を公開した。研究機関や企業などの参加者から意見やアイデアを募り、今後の議論に役立てていく。クローラーダンプなど、機種の拡大も順次検討する。

写真1■ 土木研究所は2021年11月に自律施工の公開デモを実施。重機の共通信号ルールの原案を公表した(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 土木研究所は2021年11月に自律施工の公開デモを実施。重機の共通信号ルールの原案を公表した(写真:日経コンストラクション)
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