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斬新な切り口の広報が地方から生まれている。初めに紹介するのは「デミーとマツ」だ。所属する組織が異なる2人がタッグを組んで化学反応を起こし、将来の土木を担う人材となり得る子どもをターゲットにイベントを連発する。

(写真:日経コンストラクション)
(写真:日経コンストラクション)
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噂の土木応援チームデミーとマツ
出水 享氏(デミー)(左)

福岡県出身。長崎大学大学院工学研究科の技術職員。大学では、3D点検技術などの開発に取り組む。2021年5月からユーチューバーとしても活動中


噂の土木応援チームデミーとマツ
松永 昭吾氏(マツ)(右)

長崎県出身。土木支援会社インフラ・ラボ(福岡市)の代表取締役。「橋の町医者」として、橋梁設計や地震・噴火・豪雨などの災害調査、構造物延命化に携わる

 「土木で今勢いのある広報チームは」。こう尋ねられて、九州の2人組を思い浮かべる土木関係者は少なくないだろう。型にはまらない方法で土木の魅力を発信する「噂の土木応援チームデミーとマツ」だ。土木学会の土木広報大賞では、2018年に優秀賞、19年に準優秀部門賞をそれぞれ受賞した。

 出水享氏(デミー)と松永昭吾氏(マツ)の活動は全て、報酬なしのボランティアだ。出水氏の本業は、長崎大学大学院工学研究科の技術職員。松永氏は、大手や地方の建設コンサルタント会社を経て、20年4月に起業した土木支援会社インフラ・ラボ(福岡市)で代表取締役を務めている。

 出水氏は「土木に関して一般の人が抱く印象には、3K(きつい、汚い、危険)が根付いたまま」と指摘する。工事現場は仮囲いで覆われて中が見えず、土木を意識する機会がほぼ失われている。加えて、土木の魅力や重要度を伝えるこれまでの広報が、不十分だったことを理由に上げる。

 そんな状況を打破するため、16年4月にタッグを組んだ2人。一般の人に「土木を身近に感じてほしい」「土木のファンになってほしい」という共通の思いが広報活動の原動力になっている。

 「日々の暮らしの安全や安心を守っているのは土木だ。今後は、台風や大雨など自然災害の激甚化が見込まれ、土木の重要性はますます増していく。将来の土木を担う人材の確保が急務だ」(松永氏)

 これまでのデミーとマツの活動は多岐にわたる。特に力を入れているのは、土木の体験型イベントの企画・開催だ。今まで、九州地方を中心に25回開いた。対象は、小学生や中学生など子どもたちと、その親。延べ1000人以上が参加した。

 出水氏は「従来の現場見学会のように、作業を行儀良く見て回るだけでは子どもたちの記憶に残らない」と話す。

 デミーとマツが開いてきたイベント名は、どれも目を引く。例えば、「法面でコンクリートバズーカーをぶっ放せ!」。斜面に生コンを吹き付ける際に使うホースをバズーカーに見立てた。イベントでは、実際の現場で子どもたちに吹き付け作業を体験させた(写真1)。

写真1■ 法面に生コンを吹き付ける作業を子どもが体験する様子(写真:松永 昭吾)
写真1■ 法面に生コンを吹き付ける作業を子どもが体験する様子(写真:松永 昭吾)
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 「親子で採石場の巨石を爆破」というイベントでは、爆破の迫力を身近で体感させた。積み込みや運搬に必要なショベルカー、ダンプトラックなど大型の建設機械が稼働する点にも着目。爆破の見学だけでなく、建機の操作体験なども盛り込み、子どもたちの興味をかき立てた。