土木系の写真集や復刻版書籍、アプリ、動画など手掛けた企画は数知れず。毎度のように建設業界の注目を集めている──。そんな土木のヒットメーカーが福島市にいる。寿建設の森崎英五朗社長だ。ヒットを飛ばし続ける手腕に迫った。
「土木のやりがいや魅力が伝わる本といえば」と聞かれて、「土木のこころ~夢追いびとたちの系譜~」(田村喜子著、2002年)を挙げる土木技術者は少なくない。琵琶湖疏水を手掛けた田辺朔郎をはじめ、明治から昭和に活躍した20人の土木技術者の生きざまを描いている。
出版社の山海堂の倒産で絶版となり、しばらくの間入手が困難だったが、21年3月に現代書林が復刻版を出版。業界外でも話題を集め、すぐに重版が決定した。
この復刻の発案者は、書籍や作家に縁もゆかりもなかった寿建設(福島市)の森崎英五朗社長だ。「土木のやりがいを皆に伝えたいという思いがあった」と話す。知り合いのつてなどをたどり、実現に至った。
自身の発案で、復刻版では原稿はそのままに、注釈や年表、関連図書などを加えて、若い人でも読みやすいように構成した。加えて、多くの人の目を引くよう装丁も刷新した(写真1)。もともとは白を基調とした落ち着いたデザインだった。漫画家の福本伸行氏が東日本大震災の発生時に寿建設へ贈ったイラストを、同氏の許可の下、掲載している。
実は森崎社長はこれまでも、業界の未来のために様々な企画を立てては実現させてきた。その始まりとなったのが、19年4月にグッドブックスが出版した写真集「インフラメンテナンス」だ(写真2)。
維持管理を仕事にしたいと思う若い人が少なく、日ごろから維持管理に興味を持ってもらう広報が必要だと感じていた森崎社長。そこで皆に伝える手段として選んだのが、写真集だった。