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2021年度に創設された「技士補」や国土交通省が認定する民間資格など、建設業界の資格は年々増えている。数多くの資格のなかで、何が本当に役立つのか。日経コンストラクションと日経クロステックのアンケート調査で探った。

[調査概要]
日経クロステックの読者のうち土木・建築系の技術者を対象に、2022年1月5日から19日にかけてアンケートを実施。500人が回答した。回答者の勤務先別の内訳は建設会社219人、建設コンサルタント会社123人、発注機関40人、その他118人。回答者の年齢は39歳以下が31人、40代が84人、50代が174人、60歳以上が211人

 建設業に数ある資格。建設業界で役立つ資格を探るため、土木・建築系の技術者を対象にアンケート調査を実施し、500人から回答を得た。

 まずは建設会社に所属する技術者の回答から見ていく(図1)。10人以上が保有していると答えた資格のうち、「実務に役立った」という回答で目立ったのがコンクリートに関する資格だ。コンクリート技士・主任技士やコンクリート診断士などが半数を超えた。

図1■ 建設会社ではコンクリート関連の資格が実務に役立つ
図1■ 建設会社ではコンクリート関連の資格が実務に役立つ
建設会社(総合建設会社、専門建設会社)に所属する回答者のうち10人以上が「保有している」と答えた資格とその割合。さらに、それぞれの資格がどのように役立ったかを尋ね、その回答者数を保有者数に対する割合で示した。なお、「その他の1級施工管理技士」は建築、建設機械、電気工事、電気通信工事が対象。「保有している」のカッコ内は保有者数(人)(資料:日経コンストラクション、日経クロステック)
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 他方、建設会社所属で技術士(建設部門)が実務に役立ったと考える人は4割ほど。建設コンサルタント会社の技術士では、7割近くが役立ったと答えた(図2)。

図2■ 建設コンサルタント会社では技術士の取得が昇進・昇給につながりやすい
図2■ 建設コンサルタント会社では技術士の取得が昇進・昇給につながりやすい
建設コンサルタント会社に所属する回答者のうち10人以上が「保有している」と答えた資格とその割合。さらに、それぞれの資格がどのように役立ったかを尋ね、その回答者数を保有者数に対する割合で示した。「技術士(その他の部門)」は建設部門と総合技術監理部門以外が対象。「保有している」のカッコ内は保有者数(人)(資料:日経コンストラクション、日経クロステック)
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 国や自治体など発注機関に所属する技術者は、業務の遂行に資格が必要な場面はあまりない。それでも、コンクリート診断士は保有者の8割が実務に役立ったと回答(図3)。インフラの維持管理などに役立つ資格として業種を問わず評価が高かった。

図3■ 発注機関の実務にコンクリート診断士が役立つ
図3■ 発注機関の実務にコンクリート診断士が役立つ
発注機関(国および自治体、鉄道、高速道路会社など)に所属する回答者のうち10人以上が「保有している」と答えた資格とその割合。さらに、それぞれの資格がどのように役立ったかを尋ね、その回答者数を保有者数に対する割合で示した。「保有している」のカッコ内は保有者数(人)(資料:日経コンストラクション、日経クロステック)
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 こうした資格が昇進や昇給、転職など技術者としてのキャリアアップにつながるかどうかは、業種によって分かれる。

 建設コンサルタント会社の技術者では、技術士(建設部門)が「昇進や昇給に役立った」とする回答者が半数近い。さらに、36.6%が「転職に役立った」と答えている。対して建設会社の技術者では、技術士(建設部門)が昇進や昇給に役立ったのは2割強。転職に役立ったと考える回答者は6.7%にとどまる。

 建設会社の技術者の評価では経験を重視されやすく、技術士の資格が効力を発揮する機会は比較的少ない。そうしたなかで取得するメリットの1つが、高い技術力を持つ技術者として周囲から一目置かれるようになる点だろう。建設会社所属の技術士のうち66.7%が「社内外からの評価の向上に役立った」と答えた。