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資格試験の対策では、勉強時間の確保が課題になる。そこで役立つのが、業務の合間などに短時間で学習できるようにした「マイクロラーニング」と呼ぶ手法だ。その教材として社内の技術者の知識やノウハウを活用する会社の取り組みを紹介する。

 資格対策では、座学で学ぶ機会が欠かせない。社内のノウハウを凝縮した動画コンテンツをつくって資格対策や技術伝承に生かしているのが日本工営だ。2020年6月、社内のベテラン技術者の講義をオンラインで受講できる「NKアカデミー」を開設した。

 構造力学やコンクリート構造物の維持管理といった専門的な技術から文章の書き方まで、22年1月時点で、40の講義をラインアップしている(図1)。21年度には2級建設業経理士の資格講座を開設するなど、今後は100講義程度まで拡充していく予定だ。

図1■ 基礎力を養う講座をライブやオンデマンドで配信
図1■ 基礎力を養う講座をライブやオンデマンドで配信
NKアカデミーにおける教育システムの構成の一部。主に社内の技術者が分野ごとに手分けして講師を務める。右下は構造物のメンテナンスに関する専門科目の講座の例(資料:日本工営)
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 NKアカデミーの対象は、30代前半ごろまでの若手技術者。技術力の底上げが主な目的だ。ただし、資格取得を掲げていない講座でも試験対策になるとみる。日本工営人財企画部の高橋秀部長は、「ベテラン技術者の話が試験の答案で役立つ場面も出てくるのではないか」と期待する。

 例えば19年度以降、技術士の第二次試験の筆記試験では、問題文に提示された業務や工事に対して、その進め方や工夫を述べる設問が出題されている。受験する科目に沿ったテーマが出題されるとはいえ、受験者の実務経験をそのまま書ける可能性は高くない。普段から社内の情報交換などを通じて、幅広い見識を持つことが合格への近道だ。

 NKアカデミーでは、講師が自身の実務経験を踏まえて講座内容を考える。上司や先輩が実際に直面した様々な課題への対策などを知っておけば、類似した出題に解答できるというわけだ。

 講師は立候補制で、社内アンケートでは100人以上が「講師を引き受けてもよい」と答えた。「社内で教え合う風土を醸成したい」と高橋部長は話す。

 短時間で効率よく取り組めるように、LMS(ラーニング・マネジメント・システム)という学習方法を取り入れた。LMSでは受講者がまず、20分以下の講義動画などをいくつか視聴して予習。テストに答えたり質問を投稿したりする。その後、講師がオンライン上でテストの結果などを踏まえて全体を解説し、質問にも答える。

 新入社員の研修でLMSを採用したところ、従来の対面方式の講習会に比べて受講者の満足度がかなり高まった。地方の支店から受講できる点も、社内で好評だ。

 1コマ当たりの時間を短くすれば、集中して取り組みやすくなる。移動中などの隙間時間も活用できる。受講時間は業務として認める。

日本工営 人財企画部 高橋秀部長
日本工営 人財企画部 高橋秀部長
(写真:日経コンストラクション)