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河川に隣接する擁壁の前面と背面との間に生じる水位差の設定を誤り、構造が不安定になった。河口から離れた内陸部にあるのに、港湾の基準を用いて水圧を設定していた。設計ミスの判明を受けて講じた擁壁上の県道通行止めは、1年近くたった現在も続いている。

 2018年7月の西日本豪雨で被災した擁壁の復旧工事で、内陸部の河川沿いにある構造物なのに、港湾の基準を用いる設計ミスがあった。設計で考慮する「残留水圧」を小さく設定したため、もたれ式コンクリート擁壁の安定性が足りなくなった。

 問題があったのは、会計検査院が設計ミスと指摘した岡山県道玉柏野々口線の擁壁だ(写真1)。県道を管理する岡山市は、指摘を受けて21年3月に擁壁を含む約500mの区間を閉鎖。出水期の終わりを待って21年12月に補強工事を始めた。現在も通行止めが続いている。

写真1■ 災害復旧工事が終わった岡山県道玉柏野々口線。矢印の箇所が、安定性不足と判明したコンクリート擁壁。この場所では、2018年の西日本豪雨で写真左の斜面も崩壊した(写真:岡山市)
写真1■ 災害復旧工事が終わった岡山県道玉柏野々口線。矢印の箇所が、安定性不足と判明したコンクリート擁壁。この場所では、2018年の西日本豪雨で写真左の斜面も崩壊した(写真:岡山市)
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 擁壁の延長は18.5mで、そのうち延長5mの高さが7m、残りは高さ9mだ。市が工事費約2500万円をかけて建設し、20年8月に完成した。

 擁壁は1級河川の旭川沿いに位置し、増水時には河川の水位が壁面に接する高さまで上がってくる。擁壁背面の地盤に浸透した水は、その後、河川の水位ほどすぐには低下しない。河川側の擁壁前面と、地盤側の背面との間の水位差で擁壁に加わる力が、残留水圧だ。転倒や滑動に関する安全性を検討する際には、擁壁の自重や土圧に加えて、残留水圧を考慮しなくてはならない。

 ただし、「道路土工─擁壁工指針」(日本道路協会)では、残留水圧を適切に考慮するよう規定するだけで、具体的な基準は定めていない。会計検査院によると、理由は不明だが、設計者はここで「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(国土交通省港湾局監修)を適用。擁壁の前面と背面との間に生じる水位差を、擁壁底版下面から計画高水位までの高さの2分の1と設定していた。