美観に配慮して切断したL形擁壁の上端で、露出した鉄筋が腐食した。発注者は切断面の表面処理を施工者に指示していたが、内容が曖昧だった。設計指針に従って十分な検討をせず、施工者任せにしたことが災いした。
青森県が2017年度に実施した擁壁工事で、不用意な設計変更が鉄筋の腐食を招いた。美観に配慮し、沿道の勾配に合わせて擁壁の上端を切断したものの、切断面に適切な処理を施さなかったからだ。露出した鉄筋が腐食し、擁壁の耐久性を損ねていると、会計検査院から指摘を受けた(写真1)。
この擁壁は、青森県南部町にある県道の交差点を改良する事業の一環として、県が約800万円かけて整備した。隣接する民地が県道よりも低い位置にあるため、民地との境界に道路盛り土を支えるL形擁壁を設置した。擁壁は高さ1~2mのプレキャストコンクリート製で、延長は59.7mにわたる。
建設コンサルタント会社が手掛けた当初設計では、上端が県道よりも高くなるL形擁壁を採用。道路の勾配に合わせて擁壁のサイズを変えて、階段状に並べる予定だった(図1)。
ところが県は施工中、当初設計に自らアレンジを加えた。道路の高さから10cm高い位置で、擁壁の上端を県道の縦断勾配に沿って斜めに切断するように変更したのだ。現場が住宅街にあって美観に配慮する必要があったことや、擁壁に接する民家の住民から「宅地の出入り口付近に擁壁の上端がかかって危険だ」などの指摘を受けての対応だった。