災害復旧工事で整備した農業用取水施設の護床工が、完成から9カ月で沈下した。基準書に示された河床の吸い出し防止策を講じていなかったからだ。設計前に行った河床の目視調査では、吸い出しリスクを把握できなかった。
兵庫県養父市が整備した農業用取水施設の護床工が、完成から9カ月で沈下してしまった(写真1、図1)。技術基準で示された吸い出し対策を講じていなかったことが主な原因だ。この工事は会計検査の対象となり、設計が不適切だと指摘された。
不具合が生じたのは、市が2018年度に約1900万円をかけて実施した「おうみ農業用施設災害復旧工事」だ。17年9月の台風18号で大屋川にある取水施設が被災。損傷した固定堰のエプロンや護床ブロックの一部を復旧した。
問題の護床工は、エプロンの下流側に幅6m、延長47mにわたって設けた。被災時に最大2.6m洗掘された河床を割栗石で埋め戻し、その上に、新たに製作した護床ブロック57個を鉄筋でつないで設置した(図2)。
農業用施設の復旧工法について農林水産省がまとめた基準書に基づき、市が自ら設計を手掛けた。この基準書では、護床ブロックの設置に当たって、流水による河床土砂の吸い出しを防止するために適切な工法を選択するよう求めている。
適切な工法として、「ブロックとブロックの間に栗石などによる間詰めを行う」「ブロックの接地面に吸い出し防止用のマットを敷設する」といった例を挙げている(図3)。