首都・東京で、高規格堤防の新設や堤防のない地区の築堤など水害対策が進む。防災だけでなく、環境や景観、利便性などを踏まえた総合的な観点が欠かせない。飛行機やドローンを使って空から捉えた東京の今を見ていく。
小台1丁目
スーパーと高規格の堤防共演、8mかさ上げ
荒川と隅田川に挟まれた足立区小台1丁目で、都のスーパー堤防と国の高規格堤防の共同整備事業が始まる。受注者は熊谷組で、盛り土工事の開始予定は2022年11月だ。プレロード盛り土で地盤に荷重をかけ、沈下を促進させた後に切り下げる。施工範囲は幅約220m、長さ90m。地盤高を8mほど上げる。下流側の隣接工区は09年3月に事業を完了した。既にマンションや商業施設が立っている。スーパー堤防は耐震対策と親水性の向上を、高規格堤防は超過洪水対策をそれぞれ目的とする。隅田川のスーパー堤防の整備率は3割、荒川の高規格堤防は同12%だ。
二子玉川の築堤
東日本台風の溢水の悪夢払拭へ、無堤解消
2019年10月の東日本台風(台風19号)を受けた緊急治水対策が、世田谷区の二子玉川地区で進む。災害当時、同地区には無堤区間があったため、多摩川の水があふれ出す「溢水(いっすい)」が生じた。そこで長さ540mにわたり、新たに堤防を整備する。24年度までの完成を目指す。施工箇所は付近に兵庫島公園があり、二子玉川ライズや玉川高島屋など大型の商業施設から近い。利用者が多いことから、護岸整備では親水性を重視。伐採する樹木を最低限とし、水辺のにぎわいを創出するよう計画している。
等々力大橋
多摩川に新橋、川崎市とのネットワーク強化
2021年11月、世田谷区と川崎市とをつなぐ新橋の本体工事が着工した。都道312号(通称、目黒通り)の神奈川県域とのネットワーク化を図るため、多摩川に新橋を架ける。橋長は385.9m、総幅員は31.65m。上部構造形式は鋼4径間連続合成箱桁の予定。事業主体は東京都で、概算総額100億円を川崎市と折半して進める。並行して、等々力大橋の川崎市側で、約720mにわたり宮内新横浜線宮内工区の整備も実施している。多摩川に架かる橋梁群の間隔が短くなり、交通渋滞の緩和が見込める。