受験者の問題解決能力と課題遂行能力を確認する技術士第二次試験の選択科目III。道路やトンネルをはじめ、建設部門ではいずれの専門科目でもほぼ同じ構成で出題された。国土交通省の取り組みのうち、時事性の高い施策を押さえておけば、合格に近づくはずだ。(日経コンストラクション)
1.選択科目IIIの試験内容
前回は選択科目IIの解答方法について説明した。今回は選択科目IIIの解き方を指南する。
2022年度の技術士第二次試験受験案内にあるように、選択科目IIIは、受験者の選択した科目に関する「問題解決能力及び課題遂行能力」を問うものである。選択科目IIと合わせて、3時間半の試験時間で、600字詰めの答案用紙3枚に記述する。2つの問題から1問を選んで答える。配点は30点だ(資料1)。
資料2に21年度の実際の出題を示す。小問(1)~(3)は、全科目、全部門でほぼ同じ内容だった。必須科目と比べても、小問(1)~(3)までの基本的な構成は同じだ。
受験科目ごとに、その分野で課題となっているテーマから出題される。多面的な課題を抽出させ、その中から最も重要な課題を選ばせたうえで、解決策の提示を求める。その後、解決策を講じても新たに発生する恐れがあるリスクとその対策を書かせる流れとなっている。
小問(1)で選ぶ課題は、3つと指定されたので書きやすくなった。必須科目と同様、「観点」を併せて記述するように問われているので、3つの課題は切り口を変えて記述する。「人材の観点」「コストの観点」「安全の観点」「制度の観点」「技術の観点」などでよい。抽出した項目がなぜ課題なのかを示す。背景と現状を記述すれば説明できるはずだ。
小問(2)で問われる最も重要な課題を選ぶ際には、主観を入れたくなる。だが、ここでは出題テーマに対して最もふさわしい解決策、つまり最新の国土交通省の施策で対応できるものを選ぶ。普遍的な解決策は少なくないが、試験の解答ではなるべく新しい施策を記述できるようにする。しっかり準備しておく。
小問(3)では「すべての解決策を実行しても生じうるリスクや懸案事項」が問われる。
新たなリスクや懸案事項は、解決策の欠点だ。これは当初から分かっているはずで、「技術者であれば知っておくべきだ」という趣旨での解答が求められている。リスクなどはあまりたくさん記述しないようにする。提案した解決策に不備が多いことになるからだ。
リスクや懸案事項とは、潜在的なハザードなので、発生しないかもしれない。リスクや懸案事項が顕在化しないようにする対策も解答になる。問われているのは、あくまでも解決策の実施後に発生する問題だ。
波及効果の記述が求められた科目もあった。この波及効果は、解決策によってもたらされる直接の効果ではない。直接の効果はその解決策が目的とするものであり、波及効果はそれ以外の影響によって得られる別の効果を指す。
例えば、「鋼構造及びコンクリート(鋼コンクリート)」では、解決策による直接の効果として、この出題のテーマである予防保全の仕組みが構築され、構造物の寿命が延びる。すると、併せて建設廃棄物の削減が見込まれる。この問題で波及効果が問われていれば、この部分を答えればよいのだ。