小田島組(岩手県北上市)では施工現場で発生する写真整理業務を本社に集約し、内勤社員が集中的にさばく。現場社員の生産性を高め、他社からも受注して付加価値額の拡大に挑む。IT(情報技術)を使って若手が活躍しやすい場を広げ、効果的な育成につなげている。
2022年2月、岩手県が発注した農業用水の管路敷設工事の現場で、長さ6mの鋳鉄管を埋設するための床掘りが完了した。施工を手掛けるのは、小田島組だ。現場代理人を務める豊田浩貴氏が、深さ約3.5mの穴を撮影していた(図1)。
出来形確認の撮影として、よく見る光景だ。しかし同社の場合、その後の作業内容が異なる。事務所に戻った社員が撮影したデータをカメラからパソコンにコピーし、画像を仕分けるといった作業をしていない。個々の画像を書類データに貼り付けたり、一部のデータを手入力で転記したりする作業に時間を割かなくてよいのだ。
こういった仕事は、現場から10kmほど離れた小田島組本社の一角にあるセキュリティーが施された部屋で、内勤の社員が代行する。同社は19年に、この仕組みを「カエレル」の名称でサービス化。社外からも現場写真の整理業務を引き受けている(図2)。
カエレルが担うのは、写真データの整理、出来形の規格値や実測値の入力、書類に載せる写真の有無の確認といった作業だ。現場で撮った写真をクラウドにアップロードすれば、カエレルの担当者が作業を進めてくれる。
写真整理や書類作成が現場作業の合間などでさばききれず、残業で対応せざるを得なかったことがカエレルの着想の背景にある。
撮影だけなら数分で済む。事務作業の手間を省いて現場の作業に集中でき、翌日以降の準備に時間を割けるようになった。入社3年目の豊田氏は段取りを徹底して残業を減らし、その時間を2級土木施工管理技士の試験勉強に充てている。
小田島組がカエレルの元となる写真整理作業の分担に着手したのは16年ごろ。現場のベテランの生産性を高めるために、書式に沿ってデータを転記する作業を経験の浅い若手でもこなせるように切り出したのがきっかけの1つだった。
システムには大手ベンダーのスマートフォンアプリやソフトウエアを採用し、初心者が業務を進めるためのマニュアルを文書や動画で用意。クラウドなどITインフラを整備した。