建設業界の生産性をさらに底上げするにはどうすべきか。中小の建設会社に取り組んでもらう働きかけはもちろんのこと、発注者に改善を求める声は多い。「生産性20%向上」の課題と、それに対する国などの取り組みを紹介する。
現場のICT(情報通信技術)化に先行して取り組む企業への取材を通じて、生産性底上げに向けた課題が浮かび上がってきた(図1)。
特に多かったのが、成績評定など評価に対する不満だ。例えば、国土交通省の成績評定では3次元の起工測量から設計データ作製、納品まで全面的にICT化すると、100点満点中、創意工夫の項目で0.8点が加点。部分活用だと0.4点が加点される。ただし、取り組み方は問われない。3次元設計データの作製を外注しても内製化しても、評定点は変わらないのだ。
「ICT化に熱心に取り組んでいる企業の評価点が、ICTの実績作りのために外注している企業と同じだと、モチベーションが上がらない」。ICT施工に早くから取り組み始めている地方の建設会社の社長はこう話す。
入札時の評価については国交省が2021年度に、総合評価落札方式の技術提案で生産性向上の項目を求め始めた。例えば、地方の建設会社が手掛けることが多い小規模工事に適用する施工能力評価型(I型)。I型で発注する発注者指定型のICT活用工事では、「施工の効率化や新技術の活用による生産性向上について特に配慮すべき事項」を入札説明書で求める。記載内容の妥当性は発注者が「可」か「不可」の2段階で評価する。
施工計画の提案に応じて、点数を付けることも制度上は可能だ。ただ施工能力評価型はそもそも、提案や審査に要する受発注者の負担軽減を目的に始まった。点数化するならば、その負担と期待できる効果とをてんびんにかけなければならない。