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新型コロナウイルスの感染拡大から2年がたち、職場での対策が浸透してきた。コロナを制約と捉えるのではなく、生産性向上のチャンスとする例が目立つ。4社の最先端の働き方から、次のスタンダードが見えてくる。

 午前8時15分。新東名高速道路大御神西跨道橋他3(PC上部工)工事の現場事務所前の駐車場で定例の朝礼が始まった。施工者は大林組。参加するのは下請けの協力会社などのスタッフを含めて70人程度だ。

 新型コロナ以降、ソーシャルディスタンスを確保する観点で人と人との間隔を2m程度空けるのは見慣れた光景だ。ただし、この現場はさらに一歩踏み込んでいる。

 朝礼で並ぶスタッフの前には86インチの巨大なデジタルサイネージ。通信機能を備えており、現場事務所や発注者の事務所、大林組の本社・支店とつながっている(図1)。

図1■ 大林組が取り入れた「遠隔朝礼」
図1■ 大林組が取り入れた「遠隔朝礼」
2つの会場を通信でつなぎ、同時に朝礼を開く。発注者の事務所や本社とも接続し、その日のポイントを伝える。サイネージがなくても、PCとモニターで代替可能だ(資料:大林組、写真:日経コンストラクション、右上は大林組)
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 場所は変わって、同現場の最東端に位置する現場詰所前。事務所から約4.2km離れているこの場所でも、同時刻に朝礼が始まった。巨大なサイネージがここにも設置されており、事務所前と同じ映像が映し出されている。つまりこの現場では、通信でメイン会場とサブ会場の2カ所を結び、同時に朝礼を実施している。大林組は「分散朝礼」と呼ぶ。

 新東名本線をまたぐ橋を5橋架けるこの工事は、現場が東西に極端に長い。施工計画が始まったのは2020年初で、コロナとは関係なく生産性向上のため朝礼会場を分散させる予定だった。離れた現場で作業するスタッフが朝礼のためだけに車で移動するのは非効率だからだ。

 しばらく2会場で運営してみたが、濱田啓司所長は「伝言ゲームになっているという危機感を覚えた」と言う。作業上の注意点などの重要ポイントを2会場に同じように伝えたとしても、司会者が異なれば言い方一つで理解度も変わる。伝言先が多くなればミスも生まれやすくなる。

 何かうまい方法はないかと考えている時に、大林組本社で検討しているサイネージの情報を入手し、21年9月に導入した。リース費用は月額で数十万円。「安くはないが、安全には変えられない」と濱田所長は話す。

 ツールは常に見直しているが、21年3月時点では、サイネージとiPadを使用し、それぞれにウェブ会議サービスの「Zoom」をインストールして音声と画面を共有している。

 2つの会場をつなぐだけでなく、作業上の注意点を事前に図で表現してサイネージに映し出すので、より直感的に理解できるようになった。