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新型コロナの感染拡大の影響で、オンラインによる新しい研修スタイルが生まれた。大林組では参加率が向上し、大成建設は社員の特性に応じたオンデマンド型を採用。一方で鹿島は対面へ回帰する取り組みを進めている。

 「動画をひたすら山のように撮った1カ月だった」。鹿島人事部の真辺文宏部長は、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3月をこう振り返る。動画は20年4月にオンラインで配信した新入社員研修の講義で使うためのもの。感染拡大で急きょ用意しなければならなくなった。

 新入社員は社内イントラで自由に視聴する。グループ会社で映像制作を手掛けるKプロビジョン(東京都港区)の協力があったからこそ迅速な動画撮影に対応できたという。

 鹿島人事部の北野正一郎企画グループ長は「とはいえ、実際に会ってコミュニケーションを取ることも重要だ」と話す。背景には、コロナ禍でオンラインの研修や会議が一般化していることに対する危惧の念がある。オンラインの研修などは、対面と比べると参加者の理解度や表情を読み取りにくい。

 鹿島はリアルな場での研修を社員に提供するため、次世代リーダーの育成が目的の研修施設「KX-LAB(ケーエックス・ラボ)」(東京都豊島区)を20年11月に開設した(写真1)。対象は中堅社員だ。

写真1■ 少人数で使えるコワーキングスペースが設置されるKX-LAB(写真:鹿島)
写真1■ 少人数で使えるコワーキングスペースが設置されるKX-LAB(写真:鹿島)
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 議論やワークショップにも対応できるように、可動性の高い家具を選定した。会議室は感染拡大を防ぐため、パーティションで区切ることもできる(写真2)。少人数で使えるコワーキングスペースも設置した。

写真2■ ミーティングルームで実施する研修の様子。新型コロナの感染拡大を防ぐため、パーティションで区切っている(写真:鹿島)
写真2■ ミーティングルームで実施する研修の様子。新型コロナの感染拡大を防ぐため、パーティションで区切っている(写真:鹿島)
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 KX-LABなどで実施する研修の内容は、20年8月につくった「中長期キャリア目標登録制度」とひも付ける予定で検討を進めている。社員が自律的に自身のキャリアを考えるのを支援する制度だ。真辺部長は「コロナ禍で社員同士の関わりが少なくなったからこそ、こういった仕組みを使って支援していきたい」と制度新設の意図を説明する。

 この制度は、同社が19年に導入したクラウド型の人材管理システム上で運用する。3~10年後に達成したい目標や、就いてみたい職務を登録。人事担当者だけでなく、上司も参照できる。

 鹿島が過去数十年にわたって運用してきた「自己申告制度」は、担当の職務や現在の仕事量、直近の異動希望などを登録するのみ。自身の長期的なキャリアについて社内で話し合う機会が少なかった。人材管理システム上では、自分の今までの経歴なども公開できる(図1)。

図1■ 3~10年後のキャリアプランを見据える
図1■ 3~10年後のキャリアプランを見据える
鹿島が20年8月に導入した「中長期キャリア目標登録制度」の概要。鹿島への取材と資料を基に日経コンストラクションが作成
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